逆転




「くっ…!アタシとした事が…
けど、貴様のお友達は、もうこのザマよ!」


アンパンマンに破られた触手を再生させながら、
ドロンコ姫はカーナに押し付けていた触手を放す。

この時、彼女の全身のほとんどが泥に覆われてしまっていた。


「カーナちゃん!」


アンパンマンは、彼女の側に来る。
一方カーナは、もうじき泥人形と化すためだろう、
弱々しい顔で彼に顔を向ける。


「アンパンマン…良かった…上手く行ったんだ…」

「カーナちゃん…」

「アンパンマン…アイツを…ドロンコ姫を絶対倒して…
倒して…メロンパンナちゃんや…みんなを……た………す………け………」


助けてと言いきれないまま、カーナは泥人形となってしまう。
その姿を見たアンパンマンは、
怒りに満ちた顔でドロンコ姫の方を向いてこう叫ぶ。


「もう許さないぞ!ドロンコ姫!」

「フン!新しい顔になったからって、良い気になるんじゃないわよ。
貴様にアタシを触る事なんて出来ないんだから!
ハアッ!」


そう言うと、ドロンコ姫は泥の息を吐くと、アンパンマンは素早くかわす。
そして、今度は無数の触手と2本の腕を伸ばして、
執拗にアンパンマンを掴もうとする。


「(ドロンコ姫の言う通りだ。
直接攻撃しようとしたら、メロンパンナちゃんのようになってしまう。
何処かに弱点があったら良いんだけど…)」


触手と腕をかわしながら、アンパンマンが考えていたその時―――!




「ロールリボン!」

ンギャアアァァ――――!


何処からか黄色いリボンが伸びて、
ドロンコ姫の額の目を突くと、ドロンコ姫は悲鳴を上げて苦しむ。
誰の攻撃かと思い、アンパンマンはリボンが伸びた先を見上げると、
そこには先程吹き飛ばされた、ロールパンナの姿があった。


「ロールパンナちゃん!君も無事だったんだね!」


仲間の無事にアンパンマンは笑顔を向ける。
一方、ロールパンナはその言葉に対する返事は返さず、
代わりにこう言いだした。


「アンパンマン、奴の弱点は真ん中にある目だ!」

「真ん中の目?」

「あぁ。あの時ロールリボンが、
たまたまあの目に当たった時、奴は痛がっていた。
そして今も…!」


確かに、今のドロンコ姫は額の目玉を攻撃された苦しんでいる。
そう言えば、ドロンコ魔女がこの姿へ変身する際、
首飾りを額に当てていた。
アレが、彼女の力の源なのだとすれば、アンパンチで砕いて倒せるかもしれない。


「おのれぇー!」


勝機が見えてきた所で、
ドロンコ姫は体勢を立て直して泥の息を吐きつつ、
触手と腕を伸ばしてくる。


「わっ!」


2人は、その攻撃を何とかかわすも、ドロンコ姫は泥の息を吐き続け、
触手と腕を伸ばす攻撃も止めようとしない。


「これじゃあ近付けない!」

「なら…!」


ロールパンナはスピードを上げて2人からやや離れた位置まで飛ぶと、
そにある丸い岩にロールリボンを巻き付け、
砲丸投げのように振り回す。


ロオォォォラアァァ――――――!!!


そして、渾身の掛け声と共に彼女は岩を、
息を吐くドロンコ姫の口目掛けて投げ付ける。

するとどうだろうか、
岩はドロンコ姫の口にすっぽりとハマってしまった。


「はが!?はががががが!」


口が塞がってしまい、動揺するドロンコ姫。
そのせいで、触手と腕を伸ばす事を止めてしまう。


「今だ!」

「よおし!」


その隙に、アンパンマンは彼女の額の目玉目掛けて一直線に飛ぶ。


「…があっ!
はぁ…はぁ…死ぬかと思った…あっ!」


両手を使って何とかして岩を引き抜いたドロンコ姫。
その直後、アンパンマンが自分の額の目玉に向かってきている事に気付くも、
時既に遅し―――


「アーンパーンチ!」


バコーン!

金色に輝くアンパンチが、ドロンコ姫の額の目に炸裂したのだ!


「あ!ああ…!こ…こんな…こんな、はずじゃ…!!」






「こんなはずじゃあ…!!!!」


ビキ…ビキビキビキ!

断末魔の台詞を発するドロンコ姫。
すると彼女は、両目も口も茶色く変色。
アンパンチを受けた所から光りを放出しながら全身にヒビが入ると、
ボロボロと崩れ落ちて泥の山へと変わり果てる。

そして、その光が泥人形となったカーナを包み込み、彼女を元の姿へと戻す。


「あ…あれ?私…」


いつの間にか元に戻っている事にカーナは驚く。
そんな彼女の元に、アンパンマンがやって来る。


「アンパンマン!…と言う事は、ドロンコ姫をやっつけたのね?」

「うん。ロールパンナちゃんのおかげでね…あれ?」


と、アンパンマンは振り返るも、そこには誰もいなかった。


「いないわよ?」

「まただね。気が付いたらいなくなってる事があるんだ」

「メロンパンナちゃんのお話し通りね。
一緒にお話したかったなあ…」


残念がるカーナ。
その時、突然海中が明るくなり始める。
どうやら、太陽の光が差してきたようだ。


「明るくなった?」

「ドロンコ姫をやっつけたから、雲が晴れたのかな?」

「それにしても、綺麗…」


彼女の言う通りであった。

太陽に光りに照らされる海底には、色とりどりの珊瑚の森が広がっており、
周囲の大小様々の色取りどりな魚達が、
その美しさをより一層引き立てていた。

それを見たカーナは、嬉しそうに泳ぎだす。
始めに珊瑚の森の上を舞うように泳いだり、
そして、周りの魚達の横を泳いだり、
時に宙返りや逆さまになって泳いでみたり―――

その度に水着の黒いベールがヒラヒラと舞い、
元は鳥とは思えないような雰囲気を演出していた。


「どう、カーナちゃん?」


海中遊泳を堪能するカーナに近付いてアンパンマンが問い掛けると、
カーナは笑顔でこう答えた。


「素晴らしいわ。海の中も、とても綺麗なのね。
それに、凄く気持ちが良い…
何で怖がってたのか、ホント不思議だわ」

「頑張ったかいがあったね。
僕を助けたくて、怖いのに飛び込んでったんでしょ?」

「…そうなんだけど。私1人のおかげじゃないの」

「どう言う事だい?」

「何かね。誰かの声が聞こえたの…
その人達が、私の背中を押してくれたの」

「そうなんだ。でも、いったい、誰が?」

「さあ。…あれ?でも、あの2人の声、ずっと昔にも聞いた事がある様な…
誰だったかな…?」


と、カーナは疑問の表情で、海上を見上げた。

そして、場所は変わって、
雲が晴れ、青空と太陽がまぶしい海の上空―――

その場所に浮遊する、1人女の子がいた。
それは、2人の前から姿を消した、ロールパンナだ。
彼女は、ドロンコ姫が用意した泥の展示台と、アンパンマン号を見下ろしている。

展示台とアンパンマン号は、
ドロンコ姫から放出された光りに包まれており、
泥人形となったみんなや、アンパンマン号を元に戻していた。


「これで、メロンパンナもみんなも元通りだ…ん?」


その時、ロールパンナの目の前を2羽の鳥が横切る。
それは、カーナの頭頂部の髪と同じ様な形をした羽が、
頭に生えた2羽のカナリア―――
それなりに成長した個体らしく、そこそこサイズがあったが、
親鳥まではまだまだと言った所。
特に片方は、もう片方よりひと回り小さかった。

飛び去る2羽のカナリアを、
ロールパンナは不思議そうに見つめていた。
何故なら、その2羽が普通のカナリアでは無いような気がしたからである。


「…………」


そんな不思議な気分に駆られながらも、
ロールパンナはその場から飛び去った。

そうとは知らない地上の人々は、全員展示台から下りた後。
しかも、全員が下りたのに反応するかのように、
ドロンコ姫の展示台は轟音と共に崩れ落ちて行った。


「どうやら、みんな元通りになったようだな」


その様子を見て、カレーパンマンが言う。


「はぁ…ビックリしたなあ…」

「アイス食べたら、体が固まっちゃうなんて、参ったゾウ」


最初にドロンコ姫の策略の餌食となったカバオくんとちびぞうくんが、
そのような言葉をこぼす。
これは、他の子供達やミミ先生も同じだったようで、
同様の表情を浮かべていた。


「それにしても、私達何でこんな所にいるんでしょうかねえ?
不思議ですね〜ホラーですね〜」

「私は、しょくぱんまん様が目の前にいらっしゃるだけで、
全然オッケ〜v」

「コキンちゃんもコキンちゃんも〜」


不思議がるホラーマン、
目をハートにしながらしょくぱんまんを見るドキンちゃん、
そして姉と同じ気持ちなコキンちゃん。

対して、ばいきんまんとかびるんるん、やみるんるん、
そしてちくりんらは、「はひ〜」と言った様子でその場にヘタレ込んでいる。


「しかし、私達が元に戻れたという事は…」

「アンパンマンが、何とかしてくれたのかしら?」

「! アンアーン!」


チーズは、海に向かって指差して叫ぶと、
全員がその先に視線を向ける。
すると、そこには海の上を飛ぶアンパンマンと、
海から顔を出して手を振るカーナの姿が―――!


「アンパンマン!」

「カーナちゃん!」


ジャムおじさんやメロンパンナが、安堵の声を上げる。
一方、アンパンマンは浜辺へ飛び、
カーナは浅いの所まで泳いで戻って来る。
カーナが浅い所まで来ると、メロンパンナや子供達が彼女の周りに集まって来た。


「カーナちゃん!」

「やっと海に入れるようになったんだね!」


最初に彼女を海へ入れようとした、
ニャンみちゃんとウサ子ちゃんが、声を掛ける。


「うん。みんな、迷惑掛けてごめんね。
私、もう大丈夫だから、今日は一緒に泳ぎましょう」


カーナの言葉に、子供たち一同が「うわーい!」と歓声を上げた。

一方、メロンパンナはキョロキョロと辺りを見回している。


「どうしたの?」


それに気付いて、カーナはメロンパンナに問い掛ける。


「ねえ、ロールパンナお姉ちゃんは?」

「ロールパンナちゃんなら、
ドロンコ姫をやっつけた後、何処か行っちゃったみたい」

「そう…」


姉が立ち去ったのを知り、メロンパンナは肩を落とした。


「…大丈夫よ、メロンパンナちゃん。
ジャムおじさんだって、いつか一緒に暮らせる日が来るって言ってたんでしょ?」

「うん…そうだよね」


カーナの一言に、メロンパンナは一応の納得をして見せた。


「カーナちゃん、また一歩成長したな」


海の上に立つカーナを見て、カレーパンマンが一言こぼす。


「どうやら、昨日の私の特訓が役に立ったようですねえ」

「…と言うのは置いといて。何でお前らも泥人形にされてたんだ?」


得意げに振る舞うしょくぱんまんをスルーして、
カレーパンマンはばいきんまん達に目を向ける。

すると、その場の一同の目も彼らに向いた。


「な、何だあ!?」

「いや、だから、なんでお前らまで泥人形になってたんだって話ししてんだよ」

「そう言えばそうね」

「いったい何があったんだい?」

「もしかして、あなた達がドロンコ姫を連れてきたりしたんじゃ…!」


バタコさんとジャムおじさんが首を傾げる中、カーナは彼らに疑いの目を向けた。


「はひー!違う違う!今度ばかりは俺様関係無いのだ!」

「あたしもあたしも!」

「私も何も知らないんですね〜、ホラホラ〜」


ばいきんまん、ドキンちゃん、ホラーマンのいつもの3人組は、
ドロンコ姫との関わりを全力で否定する。
それは後ろで沢山いるかびるんるんらも同じである。


「それじゃあ、どうしてあなた達は泥人形にされていたのですか?」

「しょくぱんまん様!それがですね…」
ここで、しょくぱんまんが聞くと、
ドキンちゃんが目をハートにしながら彼の側まで寄ると、
コキンちゃんの方に目を向ける。
それを合図に、ばいきんまんとホラーマンと手下たちの視線が、
一斉に彼女に向けられる。
当の本人は、ギクっとした様子でいる。


「…誰?ドキンちゃんのそっくりさん?」

「コキンちゃんだよ。ドキンちゃんの妹なんだ」

「妹がいたんだ」


まだ、コキンちゃんとは面識が無かったカーナは、
カバオくんの説明に納得する。
一方、コキンちゃんは姉に迫られてガタガタしていた。


「コキンちゃん…
アンタのせいでこんな事になったのを、みんなに話しなさい!」

「え…え、えーと…えーと……」


しかし、コキンちゃんはうろたえるばかりで、話そうとしない。

それどころか―――


「え……え……えーんえんえーん!」


コキンちゃんは、目から噴水の様な涙を出しながら泣きだす。


「ま、マズイ…!」

『かびかび――!』


それを見たばいきんまんとかびるんるんらは、
大慌てで浜辺の奥の茂みに避難。


「ほ、ホラあぁー!悲しく無いのに涙が出ちゃうんですね〜;;ホラーですね〜;;」


一方、側にいたホラーマンにコキンちゃんの涙が当たると、
ホラーマンは泣きだしてしまう。


「何で泣いてるの?もらい泣き?」

「コキンちゃんの青い涙を浴びると、泣きたくないのに泣きだしちゃんだよ」

「カーナちゃんも気を付けなよ」


青い涙に着いても知らないカーナに、
クリームパンダが説明し、カレーパンマンが警告する。
一方、その事を良く知るドキンちゃんは、傘で防御しながらこう言った。


「嘘泣きで誤魔化さない!」

「バレたか…」


ドキンちゃんに言われ、コキンちゃんは通じないと分かって嘘泣きを止めた。


「あれで嘘泣きだったんだ」

「コキンちゃんは、嘘泣きの名人何ですよ」

「だから気を付けなよ、カーナちゃん」


嘘泣きの名人である事をしょくぱんまんはカーナへ説明。
続けて、カレーパンマンが二度目の警告を送った。

とにもかくにも、コキンちゃんの嘘泣きも終わり、
ホラーマンも落ち着いた所で、改めて何があったのか、
コキンちゃんに話してもらう事となった。


「さあ、今度こそ話して頂戴」

「はぁい…」


渋々ながら、コキンちゃんはこれまでの事を説明する。

それによると、昨日ドキンちゃんの元へ遊びに出掛けようと
バイキン星から飛び出した所、困った様子のドロンコ魔女が話しかけてきたのだと言う。
そして、話しを聞いてみると、
彼女は地球に帰れないで困っていると言い出したのだ。
それを聞いたコキンちゃんは、たまたま行き先が同じだから一緒に行こうと言う事で、
彼女をバイキン城へと連れて行ったのである。


「つまりドロンコ姫は、コキンちゃんを利用してこの星に来た、
という事ですか」

「それで、ばいきんまん達が真っ先にやられた訳なんだな?」

「ふ、ふーんだ!あんな奴、油断しなければ俺様一人でも勝てたもんねーだ!」


カレーパンマンの一言に、ばいきんまんは強がって見せる。
その姿を見たアンパンマンが、微笑ましそうな笑みを浮かべる。

一方、ドキンちゃんは「ほら、みんなに言う事があるでしょ?」
とコキンちゃんに促す。


「そ、その…みんな…ご、ごめんなさい…!」


と、コキンちゃんは深く頭を下げて謝った。

それを聞いた、ジャムおじさんは笑顔でこう言った。


「良いんだよコキンちゃん。もう済んだ事だしね」

「そうよ。そもそも悪いのは、
何も知らないコキンちゃんを利用したドロンコ姫よ」

「そ、そうよね?やっぱりそうよね!エヘヘヘ」

「許してくれたからって、調子に乗らないの」


バタコさんの言葉に舞い上がるコキンちゃんに、
ドキンちゃんは喝を入れ、コキンちゃんもテヘッとした表情をして見せた。


「さて、もう朝になった事だし、みんなお腹が空いたろう?
朝ごはんのパンを作ってあげるよ」

「やったゾウ!」

「泥人形にされちゃってせいで、僕昨日から何にも食べてなかったからね。
丁度良いや〜」

「カバオくんは、そうじゃなくてもお腹すいた〜じゃないか」


カバオくんの台詞に、ピョン吉くんが突っ込みを入れつつも、
子供達やみんなは、ジャムおじさんの朝ごはんをもらおうと、
アンパンマン号の周りにワイワイ集まって来る。


「じゃあ、あたしもしょくぱんまん様のお隣で頂こうかしら?
丁度お腹すいてたのよね」

「お姉ちゃんズルイ〜!コキンちゃんもしょくぱんまんのお隣で食べる〜!」

「ホラ〜、ドキンちゃんも行くならアタシも何ですねえ、ホラー」


続けて、ドキンちゃんとコキンちゃん、
ホラーマンもアンパンマン号へ足を進める。
すると、かびるんるんらもアンパンマン号の側へと集まっていく。

お腹が空いているのは、彼らも同じのようだ。


「う、うーん…」


しかし、ここに同じく空腹なのに行こうとしない人物が約1名―――

言うまでもなく、ばいきんまんである。

何故すぐに行かないのかと言うと、
悪役としてのプライドが邪魔をしているのだ。
そんな彼を見て、アンパンマンが声を掛ける。


「行かないの、ばいきんまん?」

「ふ…ふーんだ!俺様、お腹何かちーっとも空いてな…」


ギュルルル....

と、強がろうとするが、腹の虫に邪魔される。
口では強がろうとしても、体は正直だ。


「行ったらどうだい?」

「…ふ、ふーん!
ドキンちゃんやみんなが食べに行っちゃったから、
仕方なく行ってやるだけなのだ!」


素直じゃない台詞を吐きながら、ばいきんまんもみんなの集まる所へと足を運ぶ。
そんなばいきんまんの姿に、
アンパンマンはまた笑みを浮かべた。

そして食事が終わった後、
カーナは思う存分、みんなと一緒に海で遊んだのは言うまでもない。

ひと波乱あったものの、
みんなもカーナも、無事海水浴を楽しむ事が出来たのであった。



おしまい









所変わって海底のドロンコ姫だった泥の山―――

その山のてっぺんがモゾモゾと盛り上がったかと思えば、
中からアリのように小さな小人が姿を現わす。

それはなんと、アンパンマンに倒されたはずの、
ドロンコ魔女もといドロンコ姫であった。


「ぷぅ…危にゃかった。
アンパンチがちんとーしゅる前に、
目玉の中核を避にゃんしゃせといて、しぇいかいだったでちゅ。
おかげで力の大部分をうちなっちゃったけど、
しょの内回復しゅるでちゅ」


どうやら、額の目玉の破壊は完全では無かったようだ。
小さいドロンコ魔女の姿で舌足らずな声で喋るドロンコ姫は、
まるでカメラを指差すような仕草で―――


「アンパンマン!今日はアタチの負けでちゅが、ちゅぎはこうわいかんでちゅよ!
ヒーッヒッヒのヒ〜!」


ギュルルルルル!

と言うと、体をドリルのように回転させながら、
地中へと逃亡するのであった―――



今度こそおしまい...

inserted by FC2 system