広大なる宇宙―――
様々な銀河系、星雲が点在する途方も無く広く巨大な空間。

だが、宇宙は1つではない。

宇宙の外には宇宙よりも更に広い超空間"マルチバース"が広がっており、
その中で数多くの異なる宇宙が泡状に無数に広がっている。
この途方の無い広大な宇宙空間もまた、途方も無くな広大な空間の極一部なのだ。

これは、そのマルチバースの中の宇宙の1つ、
"アナザースペース"で繰り広げられる物語である。














~アナザースペース ストーリー~

第1話 帰還、新たなる戦い


一角超獣 バキシム登場













アナザースペース―――

我々の知る宇宙、M78ワールドの宇宙とは別の宇宙。
ここではかつて、M78ワールドから飛ばされてきた悪のウルトラマン、
ウルトラマンベリアルがカイザーベリアルを名乗り、横暴の限りを尽くしていた。

だがその横暴もM78ワールドから飛んで来たウルトラマンゼロと、
アナザースペースで出会った仲間達の活躍により、粉砕された。
そして今は、彼が作ったロボット達が残存していながらも、
ゼロが仲間達と共に半ば無理矢理結成した宇宙警備隊、
"ウルティメイトフォースゼロ"の活躍のおかげで、それなりに平穏であった。

ここは、そんな平穏なアナザースペースの何処かにある、
青く美しい鉱物のような小惑星帯。
突如眩しい光と共に、所々に青いランプらしきものが付いた、
銀色の鎧を身に纏った青と赤い色をした巨人が出現する。

彼こそ、このアナザースペースをベリアルの魔の手から救ったウルトラ戦士、
ウルトラセブンの息子にして、
ウルティメイトフォースゼロのリーダー"ウルトラマンゼロ"。
今彼は、どう言う訳か時空を超越する神秘の鎧、
"ウルティメイイージス"を纏った"ウルティメイトゼロ"と呼ばれる形態を取っている。

それもそのはず、
彼はバット星人の実験場にされたまた別の宇宙の地球、
"フューチャーアース"をダイナ、コスモスと共に救いに行っていた。
そして、今丁度アナザースペースへと帰還した所だったのである。


「向こうで色々あったが、帰って来れたぜ。ふぅ…」


一息吐く様に呟くゼロ。
だがその時、彼の身に纏う鎧は青い光を放ちながら消え、
彼の左腕に移動し、
青いランプのようなものが付いた盾を思わせる形状のブレスレットに姿を変える。

ウルティメイトイージスの普段の姿、"ウルティメイトブレスレット"だ。

だが、そのウルティメイトブレスレットはその形を形成すると共に、
青かったランプから光が消え、ランプは白くなってしまう。


「どうやら、エネルギーが切れちまったようだな。
ま、しばらく使う事は無いだろうから、気にする必要も無いか…
あっ!!」


イージスのエネルギー切れを確認し、
特に心配の様子は見せないゼロだったが、唐突に何かを思い出す。


「そう言えば、ダイナの声に導かれるままに向こうの宇宙に飛んじまったが、
アイツらに他の宇宙に行く事、伝えてなかった!
マズイな…アイツら、俺が急にいなくなって今頃慌ててるぞ…ん?」


そう、彼は彼方から聞こえたウルトラマンダイナこと"アスカ・シン"の声に流されるまま、
ウルティメイトフォースゼロのメンバーに黙ってフューチャーアースに飛んでおり、
彼はそれを思い出したのだ。
なのでゼロは、彼らにどう説明しようか考えようとした。
だが、その時向こうから赤い人物が見え、その方向を見る。
その人物は、何かを叫びながらこちらに向かってきており、
しかもそれは、ゼロにとって見慣れた者であった。


「うぉーい!ゼロォ――!!」

「"グレンファイヤー"!」


グレンファイヤー…
アナザースペースの炎の海賊の用心棒で、
ウルティメイトフォースゼロのメンバーの1人で通称、"炎の戦士"。
戦って認めた相手としか話しをしない性分で、
初対面時はゼロと一戦交えた事もあったが、
ベリアル軍との戦いを経て、現在は彼の仲間となっている。

どうやら彼は、いなくなったゼロを探しに来たようである。


「たぁく…やっと見付けたぞ!
みんなで手分けしてレギオノイドの残党退治しようとか言って分かれたっきり、
どっか消えやがって!
いったい何処ブラついてやがったんだ!?」


再会して早々怒鳴るグレンファイヤー。
赤い筋肉質の体に、炎を象った頭は顔が無く表情が読めない
(ゼロなどは彼の表情の変化が分かるらしいが)が、様子から怒っているのは明らかだ。


「あぁワリィ、ちょいと他の宇宙を救いに行っててな。
しかも気になる声がして、
すぐにでも正体を確かめようと思ってすぐに行っちまったから、
お前達に知らせる暇がなくて…」

「ンなこたぁどうでも良い!とにかく来い!!」


とりあえずいなくなった事情を話そうとしたゼロだったが、
グレンファイヤーはいきなりいなくなった理由を問いただすのが目的でゼロを探していた訳じゃなかったらしく、
話しの途中でゼロの腕を掴み、何処かへ連れて行こうと飛び出す。


「え?あ!おい!いったい何処へ行く!?」

「"エスメラルダ"だ!」

「エスメラルダだと?」


エスメラルダ…
それは、このアナザーズペースに存在する全体が純度の高いエメラル鉱石で形成された惑星。
エメラルド色に輝くその美しき星には美しき国家が存在しており、
"エメラド王"と"エメルル王妃"、
そして第一王女"エメラル"と第二王女"エメラナ・ルルド・エスメラルダ"が国を治めていた。
特にゼロは第二王女エメラナ姫とはかつて豊富な資源に目を付けたカイザーベリアルが軍勢を率い、
惑星エスメラルダを占拠している間に知り合い、友人として親しい間柄であった。

そして彼女とはついこの間、
ビートスター天球にお付きのジャンボット共にさらわれると言う事件を終え、
ウルティメイトフォースゼロに新たなるメンバーを加えた後、
またアナザースペースを守る旅に出る為、別れたばかりであった。

にも関わらず、何故急にまたエスメラルダに行かねばならないのか?

ゼロは引っ張られながら考える。
そして、グレンファイヤーが自分を探しに来た時の様子や、
いきなり連れて行こうとする今の行動から、
ゼロの中に悪い予感がよぎり、彼はグレンファイヤーに聞いてみる。


「なあ、グレンファイヤー…
まさかとは思うが、エスメラルダで何かあったのか?」

「はあ?あったりまえだろ!でねえとお前を探しはしない!」


やっぱり―――!

ゼロの悪い予感は的中してしまった。
そうとなれば、エメラナ姫の安否が心配だ。
そう思い、彼女の安否ついて確かめようと試みる。


「それで?エメラナは無事なのか!?」

「姫さんはミラーナイトが王宮に逃がしたから心配ない。
きっと今頃ミラーナイトのバリアん中さ。
けど、心配なのはそっちよりも街の方だ」


エメラナ姫の無事を確認し、内心ホッとするゼロだったが、
街の方が心配とするグレンファイヤーの言葉が気になる。


「街が心配?いったいどうしたんだ?」

「どうしたもこうしたも、お前がいない間、
青いイモムイみたいな怪獣がわんさか出て来て、
街で暴れ回ってるんだ」

「青いイモムシみたいな怪獣?」

「ああ。しかもそいつぁ、ただの怪獣じゃなくてよ、
空割っていきなり出て来やがったんだ」

「空を割って出て来た…?」


青いイモムシみたいな怪獣と空を割って出て来た―――

その2つのワードを耳にしたゼロは、聞き覚えがあるような素振りを見せる。


「どうした?」

「いや、実は俺が知ってる奴のような気がして…
本当にそうかどうかは、直接見ないと分からねえが」

「なら、早く来てくれよ!
今ミラーナイトや焼き鳥達が応戦してるけど、倒せど倒せどキリがねえんだよ!」

「分かった。じゃあ、行くぜ!!」


そう言ってゼロはグレンファイヤーの手を振り払うと、
いつもの両手を前に広げたポーズを取り、
猛スピードでグレンファイヤーを追い越しつつ、
エスメラルダに向かって飛び出した。


「あ、こら!待てよ!置いてくなって!おい!!」


そして、追い越されたグレンファイヤーも、慌ててスピードを上げて追いかけるのであった。





所変わって、惑星エスメラルダの大都市。
白銀の建物が並ぶ、大自然と融和した美しい街であるはずなのだが、
現在はそうではなくなってしまった。


ガガァッ!!

ガギィー!


そう、先程グレンファイヤーが話していた青いイモムシのような怪獣の群れが暴れているのだ。
その怪獣は小さい刺2本と長い角が生えた、
先端が灰色で鼻に縦穴が2つ空いたクチバシのように尖った上顎と、
青いヒゲらしきものを生やした下顎で構成された口、
そして青く光る照準機のような目を有したオレンジ色の頭部に、
背中にはオレンジ色のゴツゴツした結晶体と、
上反りの大きな刺のような尻尾らしきものがあった。
両手には指らしきものは生えておらず、
代わりに手の平から刺のような突起が6本生えており、
その両手から火炎を吹き出すと言う奇妙な攻撃を使って、
大都市や周囲の植物を焼き払い、火の海に変えている。

だが、奇妙な攻撃はこれだけに留まらず、
中には両手から白い小型ミサイルを連射するバルカン砲のような攻撃を繰り出したり、
鼻に空いた穴からも白い小型ミサイルのようなものや紫色のビームを発射したりと、
おおよそ普通の生物とは考えられないような攻撃の数々を繰り出していた。

それらの攻撃で建物を爆破したり、
腕で薙ぎ倒していく怪獣達に、十字が集まった銀色のバリアに守られた王宮を背に、
果敢に立ち向かう巨大な人物が3人―――

その内1人は、紅白カラーのロボット―――

もう1人は、左右で配色が異なるディティールが複雑なロボット―――

そして、最後の1人は金色に輝く目を持つ、銀色の巨人―――

エスメラルダ王家に代々仕えてきた鋼鉄の武人"ジャンボット"と、
その弟に当たる存在"ジャンナイン"、
そしてジャンボット同様、
エスメラルダ王家に代々仕えてきた鏡の騎士"ミラーナイト"。

彼らもまた、ゼロと共に戦う仲間、ウルティメイトフォースゼロのメンバー達だ。


「シルバークロス!」


ヒュン!ドドォ――――ン!!

その内、ミラーナイトは一度クロスさせた両腕を、
勢い良く広げると、銀色に輝く巨大十文字の手裏剣光線を発射。
光線は並んだ怪獣達を貫通し、何体かを十文字に切り裂いた後、爆破させる。


「必殺・風車!」


一方、ジャンボットも左肩のシールドを変形させた巨大戦斧"バトルアックス"の刃をエメラルドグリーンに光らせ、
その遠心力を利用した回転攻撃で怪獣達をまとめて薙ぎ倒し、
ジャンナインも腹部のバックル状のパーツを展開させて放つ光線"ジャンバスター"で、
怪獣達を爆破させる。

だが、それでも怪獣の数は中々減らず、
爆発の中から後ろにいる大量の怪獣達が地面をへこませながら歩いて出てくる。


「チッ!数が多い過ぎる!」


余りの多さに舌打ち(?)しながらジャンナインはそうこぼす。


「確かに、キリが無い。
グレンファイヤーはまだゼロを見付けられないのか!?」

「遅いですね…
しかし、彼がゼロを連れ帰ってくるまで、
我々だけで持ちこたえなければ…うわっ!?」


と、ミラーナイトがジャンボットに言った瞬間、
背後にいた怪獣が前に屈むと、
角をミサイルのように飛ばして攻撃。
かなり強力な一撃だったのか、
角が命中したミラーナイトは、その場に跪いてしまった。


「ミラーナイト!…くっ!」


ダメージを受けたミラーナイトに思わず気を取られてしまうジャンボット。
その隙にといわんばかりに怪獣達が押し寄せ、
身動きが取れなくなってしまう。
これは、ジャンナインも同様であった。


ガガァ――ッ!


そんな中、怪獣の内の1匹が跪いたミラーナイトの前にまで歩み寄ると、
両腕を構え、脈打つような音を上げながら、
背中の結晶体を発光させる。
すると、両腕の突起からエネルギーが発せられ、
間に赤黒い光球が形成されていく。
強力な攻撃を仕掛けようとしているは明らかだ。


「ミラーナイト!みんな!!」


王宮のモニターで外の様子を見ていたエメラナ姫が叫ぶ。
無論、彼女の周囲にいた家族や、国民達もどよめいている。
そんな彼女らをよそに、怪獣は光球から攻撃を発しようとし、
さすがのミラーナイトも「これまでなのか?」と諦めかける。








だが、次の瞬間―――!!


うおらあぁぁぁぁ―――――!!!

ギャキィー!?
ボォ――――ン!!

突然、誰かが上空から足に炎を纏った急降下キックを繰り出し、
ミラーナイトを攻撃しようとした怪獣を吹き飛ばす。
飛ばされた怪獣は、後ろにいた怪獣達にぶつかり、将棋倒しになった。


「はっ!」


それに気付いたミラーナイトは、その人物に目を向ける。

否、彼だけではない。

周りにいる者全員が、その人物に目を向ける。
そしてその人物は着地して間も無かった為、
左膝と右手を地面に着いてしゃがんでいたが、すぐに立ち上がる。
その人物の姿は、彼らにとって見慣れた存在であった。

何故なら―――




「みんな、待たせたな!」


それは、彼らが期間を待ち望んでいた、ゼロだったからだ。


「ゼロ!」


ゼロの名を呼ぶミラーナイト。
王宮でもエメラナ姫を初め、
エスメラルダの国民達が英雄の登場に安心し、歓喜の声を上げていた。


「ファイヤースティーック!!」

ガギィ――――!???


その直後、グレンファイヤーも登場。
炎に包まれた棒状武器"ファイヤースティック"を振り回して、
ジャン兄弟を襲う怪獣を纏めて薙ぎ払った。


「グレン!」

「やっと戻ってきたか…遅いぞ」


ジャンボットはグレンファイヤーの名を呼び、
ジャンナインは戻る事が遅れた事を一言指摘する。
そんなロボット兄弟にグレンは答える。


「文句はゼロに言ってくれ。
この野郎、何処探しても中々見付からなくてよお…」

「悪かったな。
それよりも、まさか"バキシム"がここに現われるとはな」

「バキシム?」


聞き慣れない名前に、グレンファイヤーは首を傾げる。
そんな彼に、ゼロは説明する。


「やっぱり俺の知ってる奴だったって事だ」

「へえ、そうか…
じゃあ、この怪獣はお前のいた宇宙から来たって事か?」

「そう言う事になるが、1つだけ間違いがある。コイツらは怪獣じゃねえ」

「怪獣じゃない?」

「ああ。コイツら"超獣"って言うんだ」

「チョウ獣?するってーと、やっぱコイツらは成長してヒラヒラ飛ぶのか?!」

「そっちのチョウじゃねえよ…うおっと!!」


ボケるグレンファイヤーに突っ込むゼロ。
だが、その隙と言わんばかりにバキシムと呼ばれた超獣は、
何匹かが鼻の穴からビームや小型ミサイルを発射して攻撃。
寸での所で気付いたゼロは、横に移動してかわした。


「とにかく、詳しい話しはコイツらを片付けてからだ!
みんなは下がってな、コイツらは俺だけで充分だ!」

「待てよゼロ!抜け駆けはズルイぜ。俺にもやらせろ!」

「ヘッ!好きにしな!!ゼアッ!」


グレンファイヤーとそのようなやり取りを交わした後、
ゼロはいつもの拳法家風のファイティングポーズを構え、
グレンファイヤーはファイヤースティックを構えた後、バキシムの群れに向かっていく。


ガァ!ガガァ――――!!


一方のバキシムの群れも、雄叫びを上げながらゼロとグレンファイヤーに向かって走り出す。


「うおらぁー!しょっぱなからファイヤーフラァーッシュ!!」


ブオォ―――ン!!ブワァ―――――ン!!!!

そして最初の一撃として、グレンファイヤーはファイヤースティックを更に燃え上がらせた後、
群れの先頭のバキシムに向けて、すれ違いざまに振り下ろし、
鋭い一撃を叩きこむ。
この一撃に先頭のバキシムは耐えられず、一撃を叩きこまれた部分を赤く光らせながら倒れて爆発した。


「フンッ!デュッ!シャアァ!!!」


一方、ゼロはバキシムの群れの内の数匹相手に纏めて挑みかかる。
バキシムは数が多さで叩きのめさんと言わんばかりに一斉に近付いて攻撃しようとするも、
1匹はレオ直伝のキレのあるパンチの連激の後、払い飛ばされ、
横から襲ってきたもう1匹もキックの一撃で跳ね飛ばされ、
更にもう1匹も腹にニーキックを叩きこまれ、腹を押さえて後退させられた。


おぉ!良いぞー!

「頑張って!ゼロ、グレンファイヤー!」


王宮のモニターで2人の活躍を見ながら、応援するエメラナ姫や国民達。


「どうやら、本当に下がっていた方が良いようですね」

「そうだな。ここはゼロの言う通り、あの2人に任せよう」


ゼロとグレンファイヤーの活躍ぶりを見て、
出る幕は無くなったと悟ったミラーナイトとジャンボット。
一方、ジャンナインは納得できない様子でいた。


「何故だ?奴らは相当な数だぞ?
それに、最初は俺達が戦っていた相手だ。
俺達も戦うべきじゃないのか?」

「ジャンナイン。
確かに奴らは、最初は我々が戦っていた相手だ。
だが、そのせいで私達は消耗している。
恐らく、ゼロは気を遣ってくれているのだろう」

「それでも、あの数では不利だ。奴らは、レギオノイドとか言うロボット達とは違う」

「…そう言えば、
お前はまだゼロとグレンの強さを完全には理解していなかったな。
良い機会だ、ここで彼らの強さを見ておけ。
あの2人は、このくらいの相手には絶対に負けない強さを持っている」

「負けない強さ…?」

「ああ。とにかく、ここは危ない。早く下がろう」

「あ、ああ…」


ジャンボットの言葉に半信半疑ながらも、
ジャンナインは彼とミラーナイトと共に飛び出し、バキシムがいない辺りまで退避する。

そして、ゼロとグレンファイヤーはと言うと、バキシム相手に善戦。
グレンファイヤーはファイヤースティックと、
炎のパンチ"グレンファイヤーパンチ"を時たま出してバキシムを次々粉砕。
ゼロも絶好調である。


「デヤァ!!」


ゼロは両手を頭部に装着された2つの宇宙ブーメラン"ゼロスラッガー"に手をやると、
ゼロスラッガーに一瞬だけ緑色の光刃が走る。
その後、ゼロは両腕を真横に振うと、それに合わせてゼロスラッガーがゼロの頭から分離して飛び出し、
ゼロの左右別々に飛んで行く。


ガギィー!?

ガアァ―――!!


ヒュンヒュンヒュン!ジャキン!ジャキキーン!!

左右に飛び出したゼロスラッガーは、
緑色の光を帯びながら回転して飛びまわり、
ゼロの左右のバキシムの群れを切り裂き、次々倒して行く。

その間、ゼロは正面のバキシムの群れを攻撃する。


「フンッ!デヤッ!ヤァ!!」


引き続き、パンチやキックの応酬で次々と目の前のバキシム達を攻撃して行くゼロ。
そして、その内の1匹を宙返りをしながらのキックをして距離を取ると、
握った右手拳を腰にやり、
平手にした左手拳の左腕を真横に真っ直ぐ伸ばす動作をした後、
両腕をL字に構えて右腕から縦に長い白い感じの色合いの光線を発射する。

"ワイドゼロショット"だ!


ガギャァ――――!!!!


チュドォ―――――――ン!!!!

ワイドに広がり、広範囲の敵に絶大な効果を発揮する強力光線を受け、
ゼロの正面で集まっていたバキシム達はたちまち爆発、一掃される。


ガガァー!!

ガギィー!!


ボーン!ボーン!

だが、その爆発の向こうから2匹のバキシムが姿を現し、
前屈みになって角をミサイルの様に飛ばす。
先程ミラーナイトを怯ませたバキシムの必殺武器"一角ミサイル"だ。


「フッ…」


一方、自身に向けて放たれた一角ミサイルを見ても動じず、鼻で笑うゼロ。
彼はその場に立ち尽くし、避けようとしない。
それどころか、避ける必要も無いと言わんばかりに、
目の前にまで迫った一角ミサイルを、両手で掴んでしまった。


「凄い!ミラーナイトを苦しめたミサイルを、あんなに簡単に…!」

「さすがはゼロだ!」

「やりますねえ」


一角ミサイルをあっさり受け止めたゼロの姿に驚くジャンナインと、
感心するジャンボットとミラーナイト。


「やれやれ…
ご自慢の一角を飛ばしてしまうなんて、間抜けな奴だ。
おかげで随分と情けない姿になっちまってるぜ?
だから…返してやるぜ!!」


ヒュンッ!ザシュゥ!!

そして、一角ミサイルを受け止めた本人は、
先が尖った部分を前に向けると、一角ミサイルを発射し、
穴だけが残った2匹のバキシムの頭めがけ、一角ミサイルを猛スピードで投げ返す。
すると、一角ミサイルは2匹の頭の穴に突き刺さった。


ギギャアァァ―――!!

ガギャギャギャ、ガアァ――――!!!


ズドォ――――ン!!

一角ミサイルが頭に突き刺さったバキシム2匹は、
激痛から両手を頭の方に伸ばしながら痛がるように飛び跳ね回った末、
一角ミサイルが頭に刺さったまま爆発。
その爆発で2匹のバキシムの頭部は粉々に消し飛び、
首から下だけが残った2匹はその場に倒れて絶命する。

しかし、今度はその後ろからまた横一列に並んだバキシムの大群が現れ、
一斉に両手からミサイルをバルカン砲のように連射し、
ゼロを攻撃する。


「おっと!シャァ!!」


ピィ――――!ズダァ―――――ン!!!

それを見たゼロは空高くジャンプして難なくかわすと、
空中で右から左へ回るように動きながら、
握り拳の右手を腰に、平手の左手を胸に当て、
額の緑色のビームランプからエメラルドグリーンの細長い光線"エメリウムスラッシュ"を、
バキシム達目掛けて発射。

右から左へ回るような動きをした事により、
光線も右から左薙ぎ払う様な動きをしながら、
横一列に並んだバキシム達全てに命中し、爆発させて一掃した。


「ゼロの野郎、あんな便利なモンいっぱい使いやがって!
俺もあんなの欲しいぜ…っとと!」


ゼロスラッガーが2つある事を有効活用し、
効率良くバキシムを一掃して行くゼロを羨ましがるグレンファイヤーだったが、
その直後、バキシムの内の1匹が突起が生えた手で叩こうとしてきた為、
とっさにかわす。


「ヘッ!そんな易い引っ叩きが当たるかってんだ!バーk…
イッテェ――――!!


と、叩こうとしたバキシムをバカにしようとするグレンファイヤー。
だが、背後にいたもう1匹がグレンファイヤーの尻を蹴り飛ばしたもので、
グレンファイヤーは痛さの余り思わず跳ねあがってしまった。


「イッテ、おま…何処蹴ってんだよ!!」

ガァー!!


その事に怒ったグレンファイヤーは、
背後から蹴り飛ばしたバキシムをファイヤースティックで突き飛ばした。


「たく、ちょっとでも隙見せるとコレだから沢山いる奴は…!
よおし、こうなりゃ奥の手だ!
ウオリャアァァァァ―――――――――!!!!


ブォン!ブォン!ブオォォ―――ン!! そう言った後大声で叫ぶと、
グレンファイヤーは持っているファイヤースティックを構え、
その遠心力を利用して高速回転。
襲い来るバキシム達を次々と薙ぎ倒して行く。

一方、ゼロの方はと言うと、
先程飛ばしたゼロスラッガーが手元に戻って来る。
そして、手元に戻ったゼロスラッガーを構える。


「さあて、そろそろ終わりにするか!」


ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!

ゼロスラッガーを両手に構えたゼロはそう言うと、
光を纏って見えるほどの高速移動をしながらバキシムの群れに突撃。
そのまますれ違いざまに次々斬り裂いて行く。


ガァー!?

ガギャァ―――!!!

ギャギィ――――――!!!!


チュドドドドォ―――――ン!!!

斬られたその場で次々と爆発して行くバキシム達。
そして、ゼロが動きを止めた頃には、
彼が相手をしていた全てのバキシムが爆発し、その場に1匹も残っていなかった。
これぞ、目にもとまらぬ速さで敵陣に突っ込み一掃する必殺技、
"ゼロスラッガーアタック"である。


「凄い。あれほどの大群を一瞬で…!」


驚き感心するジャンナイン。
一方、ファイヤースティックの大回転を繰り出しているグレンファイヤーも、
何だかんだで自分が相手をしていたバキシムの群れを大体全部倒していた。


「ハァ、ハァ…あ…ヤベ、ちょっと回り過ぎた…」


が、やり過ぎたのか、
終わった頃には目を回してフラフラするグレンファイヤー。


ガガァ!!


だが、そんな彼の後ろに、
倒しそこなったと思われる1匹のバキシムが…!


「あ!」

「グレン、危ない!!」

「へぇ…?」


それに気付いたジャンボットが叫ぶ。
が、当のグレンファイヤーは目が回っているせいで、
気の抜ける声しか出せず、危機感もまるでない。
それを良い事に、バキシムは脈打つような音をさせながら背中の結晶体を光らせ、
両手の間に赤黒い光球を形成させる。

だが―――!




ゼヤァ――――!!


ジャキキ!!

その横からゼロスラッガーを両手にゼロが突っ込んで来て、
回るような華麗な動きでバキシムの体をゼロスラッガーで斬り付けた。


「ガガァギィ…!」


シャキキーン!ズドォォ――――ン!!

斬り付けた後、その場に止まってゼロスラッガーを構えてポーズを決めるゼロ。
その直後、バキシムは苦痛の声らしきものを上げた後、
その体が三等分に斬り分けられたと同時に爆発した。


「ヘッ!呆気無かったなあ…」


ゼロスラッガーを頭に戻しつつ、
爆発したバキシムに振り返り、そう呟くゼロ。


おおー!やったー!!さすがこの星を救った勇者だー!!


最後のバキシムの死を見た瞬間、王宮の中の国民達は大歓声。
無論、エメラナ姫やその家族の顔からも笑みがこぼれる。


「やりましたね、ゼロ。さすがです」


そして、それを見計らい、離れていたミラーナイト達が飛んでくる。


「まあどうって事無いさ。怪獣墓場で一度戦った事のある奴らだったしな」


得意げに答えるゼロ。
その様子を見ていたジャン兄弟の内、ジャンナインが口を開く。


「強いな…特にゼロ。
レギオノイドのような雑魚ばかり相手をしていたから分からなかったが、
まさかここまでだったとは…」

「言っただろう?彼らには負けない強さがあると。
これがその強さだ。しかし…」


語るジャンボットだったが、
未だ目を回しているグレンファイヤーに呆れた様に目を向ける。


「お前はいつまで目を回しているつもりなんだ?
ましてや、ゼロと同じく絶対に負けない強さを持つのにゼロに助けられて、
情けない…」

「あぁ〜…ンな事言われても…しょうがねだろ〜?
回り過ぎちまったんだし〜…」


フラフラとしながら答えるグレンファイヤー。
その姿にジャンボットはますます呆れるが、
その様子は先程のバキシムの大群による危機による緊張感が一気にほぐれるものであり、
先の戦いが終わった事を意味していた。








―――はずだった。








ブワ―――――――――ン!!!!


「!?」

「なんだ?」

「ん〜?!」


バンババン!!ビキビキビキ!

突如、空から奇妙な音が鳴り響き、
その場にいたウルティメイトフォースゼロと王宮の中の全員が空に目をやると、
空が音と共に奇妙な閃光を放ったと共に、白くヒビ割れる。

そして―――!




バキィ――――ン!

空がガラスのように割れると、その向こうから赤い異次元空間が顔を見せる。
だが、顔を見せたのはそれだけでなく、
その中には先程一掃されたはずのバキシムの姿があった。


ガガァー!!

「なに!?」

「これは!」

「最初の時と同じです!」


新たなバキシムの登場に驚く一同。
そんな中、バキシムは空を更に割って異次元から飛び出したのだが、
そこで更に驚きの光景が目に映る。

なんと、その異次元から現れたバキシムは1匹ではなく、
最初の1匹が飛び出した後ろから次々と飛び出して来たのだ!


「なんだと!?」

「チッ!
まだこんなに隠れてやがったか!
…ん!?」


ブワ―――――――――ン!!!!


悪態を吐くゼロだったがその次の瞬間、
別の方の空から同じような音が聞こえたもので、
そちらに目をやると、何とその音がした空も同様に割れて、
中からバキシムの群れが飛び出してくる。
しかも割れる空はそこだけではなく、
右に1つ左に2つととにかく増殖するかのように次々と別の個所の空が割れ、
そこからバキシムの群れが次々飛び出す。

雨の様に次々地面に降りて来るバキシムの群れ―――
彼ら全てが地上に降りた時には、
ウルティメイトフォースゼロは数え切れないほどのバキシムの群れに取り囲まれてしまった。


「クッ!またしてもこんなに…!」

「やれやれ…まだまだ終わりそうにないな…」

「ゼロ!今度は我々も戦うぞ!」

「ん…ん〜…
ふぅ、やっと目が回るの治った…っと。
キバムシめ、またグレン様にやられに来るったぁ良い度胸だぜ!」

「キバムシじゃなくて、バキシムですよ」

「あ…え、えっと…ああもう!どっちだって良いだろう!」


バキシムの名前を言い間違えた事をミラーナイトに突っ込まれ、
うろたえるグレンファイヤー。
そんな彼らをよそに、バキシムの群れはウルティメイトフォースゼロ目掛け、
一斉に迫って来る。


「来たぞ!」

「よおし、ウルティメイトフォースゼロ、戦闘開始!ブラックホールが吹き荒れるぜ!!」


そして、ゼロの号令と共にバキシムの群れに立ち向かっていくウルティメイトフォースゼロ。


「ゼロ…みんな…」


王宮のモニターを見ながら、呟くエメラナ姫。
新たなバキシムの群れの出現を目の当たりにしてか、
その顔には不安の色が見える。

一方、バキシム達と果敢に戦うウルティメイトフォースゼロだが、
その上空の空は何故か今も割れたままで、
真っ赤な空間が不気味に顔をのぞかせたままだ。

何やら、不吉な予感を感じさせるが、果たして…



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