悪夢の始まり


〜プロローグ:悪夢の始まり〜


2005年3月30日...

キノコ王国に朝が来た。


マリオ
「Zzzzz....ん?」

ルイージ
「…もう朝…?」


朝の到来にマリオ兄弟はベッドから起きると、
1階の居間でいつも通りの朝食を取る。


マリオ
「しっかし、この間(第37部)は、あっさり終わったな」

ルイージ
「まあ、良いんじゃない。
それより大変なのは、仕事の方だよ」

マリオ
「だよな…なんでまた下水道に、
カニやらハエやらが大発生してるのやら…」

ルイージ
「今日も行くんだよね?」

マリオ
「当たり前だ。あんなのほっといたら、まともに水道が使えない」

ルイージ
「じゃ、早く食べて行こうか」

マリオ
「おう!」


こうして彼らは、パパッと朝食を食べ終え、歯を磨くと、
配管工としての仕事に出かけたのであった。





バツガルフ
「……むっ…?」


一方、こちらは月にある
メガバッテンのアジト バツガルフの寝室…

ベッドの上で、バツガルフは目を覚ました。
ほとんど1日中夜の様な場所であったが、
それでも、彼と彼の部下達は睡眠を取るべき時はきちんと取ってるのである。


バツガルフ
「もう、こんな時間か…」


時計を見ながらそう言うと、
バツガルフはベッドから出て朝食を取り、
それが終わると、アジトの最下層部の『ある部屋』に向かう。

その部屋には、ペケダーや研究員が集まって何かを作っている様子であった。


ペケダー
「ゲヘッ!バツガルフ様、おはようございます!」

バツガルフ
「おはよう、ペケダー。『ソレ』の完成度はどれくらいだ?」

ペケダー
「大体80%ぐらいです。あと3日もすれば、完成するかと…」

バツガルフ
「と言う事は、『自己進化プログラム』も順調に出来あがっているのだな?」

ペケダー
「もちろんです。なあ?」

研究員
「ハッ!バツガルフ様の仰せのままに!」


と、声を掛けられた研究員の内の1人が、元気よく答えた。


バツガルフ
「よろしい。フフフ…TEC-XXは、前(ペーパーマリオRPG参照)にピーチ姫に懐いて我らを裏切った上に、
この間(第23部)は、それが原因でおかしくなった挙句、
ピーチ姫によって大破させられてしまったからな。
一応、修理に修理を重ねて元に戻しておいたが、
どうやっても奴は奴だ…いつまた、エラーを起こすかも分からん」

ペケダー
「しかし、どうしてまた自己進化プログラムを?
最初からテック以上の性能を持ってて、
ワシら以外の者に従わないように作った方が早いんじゃ…」

バツガルフ
「決まっているだろう、ペケダー…
テックがピーチ姫に対して起したエラーを、我々の手で起こす為だ」

ペケダー
「はあ?」


バツガルフの発言に、ペケダーは首を傾げた。
先程、問題視したはずのエラーを、
今度は自分達で起こそうと言い出したのだから当然である。
その疑問に答える為、バツガルフは次のように説明する…


バツガルフ
「ペケダーよ。私は何故テックがああなってしまったのか、考えてみたのだ。
いったい何故奴は、ピーチ姫に懐いてしまったのか?
何故、暴走をおこしたのか…
考えに考え抜いて、私はある結論に至った」

ペケダー
「結論…と言いますと?」

バツガルフ
「あのエラーは、一種の進化だ。
奴は、ピーチ姫に出会うまで、我々に従順だった。
しかし、あの時ここに連れてきたピーチ姫に奴は惹かれ、
何かが変わったのだ。だからこそ、ピーチ姫を優先する行動を取り、
あのようなエラーを起してしまったのだ。
だから、『コイツ』にも我々に対する何かを思うような感情が、
生まれるようなキッカケを作れば…」

ペケダー
「なるほど!そうなれば、ワシらに従順になるよう、成長する…
自己進化プログラムを作ったのは、そう言う訳ですな!」

バツガルフ
「珍しく物分かりが良いじゃないか。お前も、進化し始めたか?」

ペケダー
「ゲヘッ!それほどじゃありませんよ」

バツガルフ
「では、手抜かりないようにな。
『コイツ』を『理想のコンピューター』に仕立てる為にも」

ペケダー
「了解です!おいお前達!頑張って仕上げるんだぞ!」

研究員達
『了解!』


研究員達は声を揃えて返事をすると、何かを作る作業を続行する。

だが、まさか今作っているものが、
恐ろしい『悲劇』の元凶になろうとは、彼らも…

いや、世界中にいる誰も、まだ知らない…





そして、翌日3月31日の午前7時44分…

―オドロン寺院 屋上―


ランペル(ニセマリオ)
「正義のヒーロー、スーパーマリオ参上!
悪党ども、覚悟しろい!
…うーん…何かしっくりこないなぁ…」


次のクラウダの劇の為、ランペルはニセマリオになって、
自主練習していた。
だが、どうもイメージが固まらないようである。


ランペル(ニセマリオ)
「あーあ…
どうして、劇の役者なんかになっちゃったんだろう、僕…
けど、ちゃんとやらないと、怒られちゃうしなぁ…
あぁ、めんどくさいめんどくさい」


と、愚痴っていた、その時…!




ビシャア―――――ン!!!!

突然、寺院の側に雷が落ちた。


ランペル(ニセマリオ)
「ウシャ!?な、なんだなんだあ!?」


特に雷雲も無しに雷が落ちて驚くランペル。
一方、落ちた現場では、奇妙な事が起きていた。
雷が落ちて出来たと思われるクレーターの中央で、
電撃を纏った黒い球体が出現していたのだ。

そして…




バヒュンッ!

黒い球体が弾けると、
中から跪く様な姿勢でしゃがみ込んだ何者かが、姿を現わす。
その何者かは、目を赤く光らせると、
その場からゆっくり立ち上がり、周囲を見渡す。


何者か
「ピピピ…年代、確認…
ピピピ…2005年3月31日。目標の年代に、到着…
転移場所、確認…
ピピピ…オドロン寺院?キノコタウン、ではない?転送ミスか…
む?」


ふと、何者かが寺院の方に目を向けると、
そこからニセマリオに化けたままのランペルが、
こちらに向かってくるのが見える。
先程の雷を不審に感じ、変身を解き忘れた状態で様子を見に来たようだ。


何者か
「ピピピ…分析開始…」


何者かは近付いてくるニセマリオを分析した。


何者か
「分析完了…目付きに差異があるものの、
色、服装、体格、帽子のマークからマリオ本人の可能性99%…
こんな所にターゲットがいるとはな…」


そう言うと何者かは、
なんとドロドロに溶けるように、その場から消える。

そうとは知らないランペルは、雷が落ちた現場に到着してしまう。


ランペル(ニセマリオ)
「何じゃこりゃ!まるで隕石が落ちた跡みたいだ」


雷が落ちた現場の様相に、ランペルは驚きの声を上げる。

しかし、その背後で何者かが姿を現わして、
足音を立てずにゆっくり近づくと…


ランペル(ニセマリオ)
「ぐはあ…!!???」


腕を、鋭い槍か剣のように変形させると、
彼の背中を突き刺して腹まで貫通させる。

いきなりの激痛に、ランペルは訳が分からないまま、
腹と背中から赤い血を流したまま意識を失う。

ズブ… ドロン!

それから、何者かは突き刺した腕を引き抜くと、
ランペルはその場に倒れ、元の姿に戻る。


何者か
「ターゲットに化けた、偽者だったか。
なんと紛らわしい…
本物のターゲットを、捜さねば…」


そう言うと何者かは、またドロドロに溶けて何処かへと姿をくらました。

そして…




ビシャア―――――ン!!!!

ランペルのすぐ後ろで、何者かが出現した際に落ちたのと、
同じ雷が落ちると、こちらにも黒い球体が出現。
それが弾け飛ぶと、
今度は中から人間と思われる謎の女が出現する。


謎の女
「…着いたか。年代は?」


謎の女は、
片手首に着けた腕時計型のデバイスらしきものを開くと、
年代を確認。

それには、2005年3月31日と表示されていた。


謎の女
「どうやら、追跡に成功したようだな。
…む!?」


と、謎の女は、自分の目の前で血の海のど真ん中に倒れた、
ランペルがいる事に気付く。


謎の女
「君、大丈夫か!?」


ランペルの側まで近寄り、体を揺すってみるが、
当の本人は、苦しげな顔付きかつ虫の息であり、反応すら無い。
そこで彼女は、デバイスらしきものでランペルをスキャンしてみる。
少しして、デバイスにスキャニングの結果が表示される。


謎の女
「生命反応微弱…5分後に死亡する可能性あり…!
何て事だ…『奴』め、もうこの時代の人に手を掛けるとは…!」


謎の女は、悔しげな様子を見せるが、
すぐに表情を改めて、ランペルに右手をかざす。
すると、優しい光がポウッとランペルを包み込むと、
ランペルの傷が小さくなり、苦しげな表情もほんの少しだけ和らいだ。


謎の女
「これで、死亡までの時間は大分遅らせられた。
後は、建物の中で手当てしてやれば…
ん?」


謎の女は、そう言ってオドロン寺院の方に目をやると、
向こうの方から誰かが寺院に向かってくるのが見える。


謎の女
「…どうやら、その必要は無さそうだな」





誰か
「ランペルちゃ〜ん!劇の練習手伝いに来たわよぉ〜ン」


そう言いながら、オドロン寺院の玄関までやって来たのは、
むっちりした雲マダムの、クラウダ。
どうやら、ランペルの練習の手伝いに来たようである。


クラウダ
「…ランペルちゃん?どうしたのン?開けるわよン?」


呼んでも返事が無いので、クラウダは玄関の扉を開ける。
すると、彼女の目の前には腹部に傷を負って倒れた、
ランペルの姿が…!


クラウダ
きゃあー!ランペルちゃあぁ――ん!!


無残なランペルの姿に、クラウダは悲鳴を上げた。
その様子を、玄関から見て右奥の壁の影から謎の女が覗いていた。


謎の女
「やはり、彼の仲間だったか。ひとまず、安心だ。
それよりも、問題は『奴』の方だ。
何処へ行ったんだ?」


謎の女は、何者かが出現した現場まで行くと、
また腕時計型のデバイスらしきものを起動。
今度は、周囲の地面をスキャンすると、
デバイスに銀色の足跡の様なものが表示される。


謎の女
「液状ナノマシンの跡…間違いない。『奴』のものだ。
アシア・トレース起動!
『奴』のルートをトレースしてくれ」


と、謎の女はデバイスらしきものに向けてそのような事を言うと、
デバイスは足跡の様なものが続く先を解析。
すると、その跡が何処へ向かったのかを示す、
大まかなルートらしきものが表示される。


謎の女
「ここから、北西に向かったか。
早く『奴』を止め、『彼』に会わなければ…!」


バシューン!

そう言うと謎の女は、両足から何かを噴き出すと、
凄まじいスピードで寺院から走り去ったのであった。





そして、そのような事が起きてから、7時間47分後…


午後15時半…

―ダイヤモンドシティ ワリオカンパニー―


ワリオ
「グハハハハ!見ろ、この色を!」


本社ビルの社長室で、ワリオがワルイージの目の前で、
仁王立ちで笑っていた。
この時の彼は、いつもの帽子とつなぎ姿だったのだが、
何故かそれらの色が、マリオと全く同じになっていた。


ワルイージ
「な、何だよいきなり?」

ワリオ
「それが質問された奴が言う台詞か?」

ワルイージ
「何の脈絡も無く質問されて、答えられる訳無いだろ…」

ワリオ
「お前、いつからそんなにノリ悪くなったんだ?」

ワルイージ
「はいはい…ドーシタンダヨあにき、ソノイロハ?(棒)」

ワリオ 「何で棒読みなんだよ!」

ワルイージ
「アニキがノリ悪いとか言うからだろ?」

ワリオ
「チッ…まあいい。俺様がこんな色になったのは、
このバッジのおかげだ」


そう言うとワリオは、
真ん中にMの字が刻まれた赤い六角形のバッジをワルイージに見せる。
それは、あのエムブレーム系列のバッジに良く似ていた。


ワルイージ
「何じゃそりゃ?」

ワリオ
「グフフ…コイツは『エムブレームM』!
マリオにすら見付けられなかったレアバッジだ!
この間、川に落ちてたのを拾ったんだぜ?スゲーだろ?」

ワルイージ
「まさか、それを自慢する為にここに来たんじゃないだろうな?」

ワリオ
「それだけじゃねえ。
今から、この格好で街をブラブラしてやろうと思ってな、
その事を知らせに来たんだ」

ワルイージ
「おいおい、マリオの評判落としでもする気か?」

ワリオ
「その通り!」

ワルイージ
「あのなアニキ、そんな事する暇あったら、
明日の花見のスケジュールでも考えたらどうだ?」

ワリオ
「あ〜?何で俺様が、そんな面倒な事しなきゃならねぇんだ?」


そう言いながら、ワリオは鼻くそをほじる。
そんな彼の態度に、ワルイージはこう反論した。


ワルイージ
「この前、社員と一緒に花見に行こうとか言い出したのは、
アンタだろ?」

ワリオ
「あぁ、確かに言ったな。けど、スケジュールまで考えるとは言って無い」

ワルイージ
「はあ?」

ワリオ
「『はあ?』じゃねえよ。
社員招いての花見なんだから、スケジュールは社長のお前が立てたら良いだろ?」

ワルイージ
「そんな滅茶苦茶な…」

ワリオ
「会長の命令に滅茶苦茶もハチャメチャもねえよ。
もう行ってくるから、帰って来るまでにきちんと立てとけよ。
じゃな!」

ワルイージ
「あ、ちょっと…!」


ワルイージは止めようとしたが、
ワリオは無視して社長室を後にした。


ワルイージ
「…たくっ。あれが、この会社建てた奴の態度かよ…
バチが当たっても知らないぞ?」


呆れた顔で呟くワルイージ。

しかし、この発言が悲惨な形で実現するとは、
彼はまだ知らない…





―ダイヤモンドシティ 繁華街―


ワリオ
「ガハハハー!俺様はマリオ様だ〜!ニンニクニクニクニンニクニ〜♪」


エムブレームMでマリオカラーとなったワリオは、
マリオのフリをしつつ、下品な動きや言動をしながら、
街で騒ぎまわる。
マリオがおかしくなったと思っているのか、
それともマリオの色をしたワリオが騒いでいるからと思っているのかは分からないが、
街の住民はそんな彼の姿に釘付けになる。

そして…



何者か
「マリオ…?」


一番釘付けになっては行けない人物が、その中に紛れ込んでいた。
それは、先程ランペルに致命傷を負わせた、何者か…
彼は、人気の無い路地裏の中から、騒ぎまわるワリオの姿を確認する。


何者か
「分析開始…」


ピピピピピ…

すると、その何者かは、ワリオの姿を分析した。


何者か
「分析完了…体格、顔付き、帽子のマークに差異あり。
しかし、色と服装から、ターゲットの偽装の可能性90%。
…既に、私の存在に勘付いたとでも言うのか?
ならば、少しばかし、工夫せねばならないな…」


そう言うと何者かは、ドロドロになったかと思えば、
その姿を変化させていく。

そうとは知らないワリオは、
調子に乗ってブーブーとオナラを撒き散らしていた。


ワリオ
「どうだあ!スーパーマリオ様のオナラは、
スーパー級にクセーだろぉ!
…イデッ!」


コンッ!

だがそこに、空き缶が彼の頭に投げ付けられた。


ワリオ
「誰だ!このマリオ様に空き缶をぶつけやがったのは!?」


そう言ってワリオは、キョロキョロと周りを見ると、
路地裏に目が止まる。
何故ならそこには、青いパーティ帽子を被った、
白い布をかぶったような怪物…
先程オドロン寺院でやられたはずの、ランペルがいたからである。


ワリオ
「テメェか!?」

ランペル
「そーだよー!お前の屁なんて屁でもないもんねーだ!」

ワリオ
「寒い事抜かしやがって…
俺様のブリブリパワーで吹っ飛ばされたいのか!?」

ランペル
「やれるもんならやってみなよ。ウシャシャシャシャ!」


ワリオを挑発すると、ランペルは笑いながら路地裏の奥へ消えて行く。


ワリオ
「待ちやがれ!」


ワリオもすぐにその後を追って、路地裏に入る。
だが、入ってみれば、ランペルの姿は忽然と消えている…


ワリオ
「いない?何処行きやがった!?」


ランペルの姿を探すワリオ。
だが、その隙にと言わんばかりに、
彼の背後の地面からランペルが出てきたかと思えば、
その姿はドロドロとなり、一瞬の内に彼を襲った何者かに姿を変える。

そう、先程のランペルは、何者かが化けた偽者だったのだ。


ワリオ
「ガハアッ…!?」


何者かは無言でランペルの時と同じ方法で、
ワリオの体に腕を突きさし、背中から腹まで貫通させると、
ワリオは口から赤い血を吐いた。


何者か
「…………っ?」


そして、腕を引き抜こうとした所で、異変が起きる。
抜こうとしても、抜けないのだ。

何故なら…




ワリオ
「グッ…!貴様…いきなり、何しやがる…!?」


ワリオが、腹まで貫通したそれを、掴んでいたからである。
しかし、何者かは特に取り乱す事無く、静かにこう言った。


何者か
「この一撃が致命傷にならないとは…
さすがは本物のマリオと言ったところか…」

ワリオ
「は…はあ…?な、何言ってやがる…?俺様は、本当は…」

何者か
「だが、これならどうだ?」


ズジャアッ!

何者かがワリオの発言を無視しながら、そのような事を言い出すと、
突如、ワリオのわき腹や胸、背中から、
複数のトゲが突き出した。
どうやら、突き刺した腕から、
新たにトゲを生やしたようである。


ワリオ
「ゴブァー!?」


まさかの追加攻撃に、ワリオは更に大量の血を吐き出すと、
何者かを掴む手が緩んでしまう。
この隙に、何者かは、トゲを引っ込めると、
腕をワリオから引き抜いた。


ワリオ
「グ…ガァ…!テメェ、いったい何も…ッ!?」


さすがの彼も大ダメージだったのか、足下がフラついている。
そんな足取りで、初めて何者かの姿を直視するのだが、
どう言う訳か、その姿を見て驚く。


ワリオ
「き、貴様は…!いや、違う…だ、誰だ…!?」

何者か
「この期に及んでとぼけるとはな。
だが、それも無意味…」


ズバババババババババ!!!!

そう言うと何者かは、変形したままの腕を振り回し、
ワリオをメッタ斬りにした。


ワリオ
「! ム"グウ"ワ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"―――――ッ!!!!!


独特の悲鳴と共に、
切り傷だらけかつ、血まみれになって吹っ飛ぶワリオ。
彼は、そのまま地面にドスンと叩きつけられると、
白目になって意識喪失。周囲が血の海と化す。

そして…



カランカラーン…

その拍子にエムブレームMが外れ、音を立てて地面に落ちる。
すると、ワリオの服の色が、元の色に戻る。


何者か
「コイツも偽者だったのか。
おまけに、こちらの正体を目撃している…
放っておいても死ぬだろうが、念の為トドメを刺しておこう」


そう言って何者かは、
地面に落ちたエムブレームMを踏み潰しながらワリオに近付き、トドメを刺そうと、
腕を振り上げた。


???
「させるか!」


ドォ―――ン!!

だがそこに、誰かが猛スピードでショルダータックルで突っ込んできて、
何者かを吹き飛ばす。

それは先程、ランペルの前に姿を現わした、謎の女であった。


謎の女
「はぁ…はぁ…何とか間に合った。
君、大丈夫…な訳無いよな……」


ワリオが重傷である事を確認するや、謎の女は彼に右手をかざすと、
先程ランペルを包んだのと同じ光が、彼の体を包み込む。
すると、彼の腹部の傷や切り傷が小さくなり、
トゲで出来た傷も、不完全ながらも塞がった。


何者か
「…………」


そんな中、吹き飛ばされた何者かが、
こちらに向かって飛びかかって来る。


謎の女
「!」


シュボボボボッ!

それに気付いた彼女は、右手から火炎弾を連射する。
それは、マリオのファイアボールに非常に良く似ていた。

だが…



ボッボボボ…!

火炎弾は何者かに命中したものの、かき消えてしまった。


謎の女
「効かない!?
コイツの液状ナノマシン、アンチエレメント性に改良されたのか!?
なら…!」


ガチャ…バヒュン!

謎の女は左手を向けると、
何とその左手首が蓋のように開いて、グレネード弾が放たれる。


何者か
「む…?」


カチーンッ!

グレネード弾は、何者かに命中すると、爆発。
すると、何者かの体は一瞬の内に白い煙に包まれたかと思えば、
凍結してしまった。


謎の女
「よし!これ以上、
無関係なこの時代の人達を犠牲にさせる訳には、いかないからな。
しばらくそこで、頭を冷やしておけ」


バシューン!

謎の女はワリオを抱えると、
両足から何かを噴き出して、その場から猛スピードで走り去る。


何者か(凍結)
「ピピピ…機体、凍結…。発熱プログラム、起動…」


ジュ―――.....

彼女らがいなくなってから、何者かは自らの状態分析をすると、
体から高熱を発生させ、
自身の動きを封じる氷を溶かして脱出。

脱出早々、路地裏から顔を出して、ワリオらの姿を確認するが、
彼らの姿は見当たらない。


何者か
「ピピピ…ターゲットの偽者及び正体不明の女、ロスト…
まさか、妨害が入るとはな。
しかしあの女、いったい何者だ?データ検索…」


ピピピ…

何者かは、データの検索してみた。
すると、ある結果が彼の中に表示される。


何者か
「…なるほど。『対抗軍』の差し金か…
既に、こちらの計画に勘付いていたようだな。
ならば、キノコタウンへの移動を優先しよう…」





何者か
「マリオ抹殺を…」





所変わって、ワリオカンパニー本社裏手…

ここにあるゴミ捨て場に、ゴミ一杯のゴミ袋を抱えた少年が1人…

ダイヤモンド小学校の生徒かつカンパニーの社員の1人、
ナインボルトだ。


ナインボルト
「ヨイショ…ヨイショ…
はぁ…何でボクチンが、ゴミ捨てなんかしなきゃならないんだよ?
よっこいしょっと…!」


どうやら、社内のゴミ捨てを誰かに押し付けられたようで、
愚痴りながらゴミ袋をゴミ捨て場に捨てる。

だがその時、背後でドスンと何かが倒れる音がした。


ナインボルト
「だ、誰!?」


音のした方を振り返ると、
そこにはズタボロで意識喪失したワリオが、倒れていた。


ナインボルト
「わ、ワリオさん!?どうしたの!?ワリオさん!」


動かなくなったワリオにナインボルトは駆け寄る。
その様子を、謎の女は影から見届けると、その場から立ち去った。

しかし、彼女は何者なのだろうか?

そして、何者かの言うマリオ抹殺や対抗軍とはいったい…





更に翌日の4月1日の午前8時頃…

昨日、そんな事が起きていたなどと知らないマリオ兄弟は、
いつも通りに朝食を済ませた後であった。


マリオ
「さてと…下水道のモンスター退治も昨日で全部終わったし、
今日はウチでゆっくりしようか?」

ルイージ
「それなら、テレビでも見る?」

マリオ
「あぁ、良いな。じゃあ、早速着けてくれ」

ルイージ
「はいはい、ポチッとな」


パッ!

マリオに言われ、ルイージはテレビの電源を入れる。
すると、画面にメガネを掛けたキノピオの男性が、姿を現す。

彼の名は、ニュースキャスターの『キノール氏』。
どうやら、丁度ニュースをやっているようである。


キノール氏(テレビ)
『ここで、昨日起きた事件についてのニュースです。
昨日の午前に、オドロン寺院のランペル氏が
午後にワリオカンパニー会長ワリオ氏が、何者かに襲撃される事件が発生。
両者、幸い一命を取り留めたものの、
重傷で現在もキノコ東病院及びダイヤモンド病院にて入院中。
インタビュー映像も届いております』


キノール氏がそう言うと、映像は、腹が包帯グルグル巻きで、
ベッドに座るランペルと側で付き添うクラウダが、
インタビュアーの女性キノピオを前にしたものに切り替わる。


女性インタビュアー(テレビ)
『ランペルさん、昨日何者かに襲われたとの事ですが…』

ランペル(テレビ)
『あぁ…マリオに化けて、次の劇の練習をしてたら、
突然、雷雲も無しに雷が落っこちてね。
変身解くの忘れて様子見に行ったら、後ろからザックリと…』

女性インタビュアー(テレビ)
『犯人の姿は、見なかったのでしたね?』

ランペル(テレビ)
『後ろから刺されて、すぐに気絶しちゃったからね。
そんな状況で、姿なんか見れるはずないさ。
ただ…』

女性インタビュアー(テレビ)
『ただ?』

ランペル(テレビ)
『あの時、僕は致命傷を負ったはずなんだよ。
実際、刺された時の痛さは、何かこう…
激痛を通り越した別の何かのような、
とにかく言葉で表現できないような感じだった。
けど、医師から、
入院でどうにかなる程度の大きさだったって聞かされた時は、
それはもう不思議だったよ。
おまけに外で刺されたのに、
ここにいるクラウダは、玄関で倒れてたって言うし…』

女性インタビュアー(テレビ)
『クラウダさん。それは、本当ですか?』


と、インタビュアーはマイクをクラウダに向けると、
彼女はこう答える。


クラウダ(テレビ)
『そうよン。
劇の練習のお手伝いをしに来たら、
彼が玄関で倒れててン…』

女性インタビュアー(テレビ)
『特に変わったものは、目撃しなかったとの事ですが…』

クラウダ(テレビ)
『えぇ。ランペルちゃんを助ける事で、頭が一杯で…』

女性インタビュアー(テレビ)
『そうですか。ランペルさんは、他に気になる事は?』

ランペル(テレビ)
『無いね』

クラウダ(テレビ)
『その代わり、アタクシに一言言わせて頂戴』

女性インタビュアー(テレビ)
『何ですか?』

クラウダ(テレビ)
『マリオちゃん。もしも、これを観ているなら聞いて頂戴。
ニセマリオになっていたランペルちゃんが、
襲われたと言う事は、
犯人の真の狙いはきっとマリオちゃんよン!
だから、外を歩く時は絶対に気を付けてねン!』

女性インタビュアー(テレビ)
『…以上。キノコ東病院からお送りいたしました。ご協力どうもです…』


クラウダがメッセージを言い終えるのを見計らって、
インタビュアーが中継終了と感謝の意思を伝えると、
映像は、ダイヤモンド病院のワリオのものに切り替わる。

ワリオも体が包帯グルグル巻きの格好で、ベッドの上に座っており、
ワルイージが付き添っている。
そして、彼らの目の前には、
男性キノピオのインタビュアーが、マイク片手に病院の椅子に腰掛け、
ワリオに質問をする。


男性インタビュアー(テレビ)
『ワリオ会長。昨日、エムブレームMを着用して、
街中にいた際に、犯人に襲われたそうですね?』

ワリオ(テレビ)
『あぁ。何していたかは、言いたくないが…』

ワルイージ(テレビ)
『…………』

男性インタビュアー(テレビ)
『しかし、犯人の姿は見たと聞いていますが…』

ワリオ(テレビ)
『もちろんだ。俺様は、犯人の姿をハッキリこの目で見た!』

男性インタビュアー(テレビ)
『どのような人物だったので?』

ワリオ(テレビ)
『人物?いいや、アイツは人じゃあねぇ!
人の姿をした化け物だ!』

男性インタビュアー(テレビ)
『化け物ですか…いったい、どのような姿をしていたので?』

ワリオ(テレビ)
『マリオそっくりのメタルの怪物だ!
奴は、ランペルに化けて俺様をおびき寄せ、
剣か何かみたいな腕で後ろから刺しただけじゃ飽き足らず、
腹ン中からトゲを突き出した挙句、
メッタ斬りにまでしてきやがったんだ!
この俺様を、ボロ雑巾にするたぁ、全くもって許せねぇぜ!』

ワルイージ(テレビ)
『けどアニキ、これって自業自得じゃあ…』

ワリオ(テレビ)
『お前は黙ってろ!』


突っ込みを入れてきたワルイージをワリオは怒鳴って黙らせる。
それを見たインタビュアーは、
少し焦りながら、次の質問をする。


男性インタビュアー(テレビ)
『そ、そのメタルの怪物というのは、
メタル化したマリオさんじゃ無いんですね?』

ワリオ(テレビ)
『当たり前だ!
奴の身体能力は化け物じみてるが、
だからってランペルに化けたり、あんな形の腕なんかもったりしねぇよ!』

マリオ
「(化け物じみた生命力のお前に言われたくないな…)」


と、マリオが心の中で突っ込む中、インタビューは続く。


男性インタビュアー(テレビ)
『ところで、話によると、
路地裏で襲われたはずなのに、本社の裏手で倒れていたとの事ですが…』

ワリオ(テレビ) 『あぁその事か?不思議なんだよなぁ…
確かに路地裏で襲われて、気を失ったはずなんだ。
しかも、病院に担ぎこまれた時は、一部の傷が塞がってたって言うし…
まあ、俺様不死身だから、小さい傷の1つや2つあっという間に治るけどよ』

男性インタビュアー(テレビ)
『そうですか。他に、なにか気になる事は?』

ワリオ(テレビ)
『無いな。強いて言えば、
あのメタル野郎を見つけ出して、ぶっ飛ばしてやりたいと思ってるぐらいだな』

ワルイージ(テレビ)
『アニキ、お願いだから大人しくしてなよ…
あ、俺も特に無いぜ』

男性インタビュアー(テレビ)
『そうですか。インタビューにご協力、ありがとうございます。
以上、ダイヤモンド病院からでした』


男性インタビュアーがそう言うと、
映像はキノール氏のいるスタジオに戻る。


キノール氏(テレビ)
『以上のように、両者ともにマリオ氏に化けていた最中に後ろから刺されたという点から、
キノコ警察署は、
メタルの怪物が両事件の犯人と見て捜査を開始。
2人を救出した存在がいるかもしれない事も視野に入れて、
現在も捜査中です』


ニュースの内容を読み上げていくキノール氏。
そのニュースを見ていたルイージは、
怯えるような様子でこう言った。


ルイージ
「怖い事件だね…」

マリオ
「全くだ。何処のどいつだ?俺の命を狙ってるのは?」

ルイージ
「今までが今までだから、該当する奴が多過ぎるよ。
クッパ軍団の仕業ではなさそうだけど」

マリオ
「奴らの差金だったら、真っ先にウチか城に攻めて来るしな」

ルイージ
「考えられるとしたら、
いつぞや(第25部)の鋼鉄連合だか鋼鉄軍団だかがけしかけて来た、
メタルもどきかな?
犯人はメタルの怪物みたいだし」

マリオ
「けど、連中は俺達があの時全員ぶっ潰しただろ?
もし仮に生き残りの仕業として、何で俺の偽者ばかりを襲うんだ?」

ルイージ
「偽者ばかり襲ったといっても、被害者はまだ2人だよ?
復讐の予告に、これから僕の偽者を襲う可能性だってあるんじゃない?」

マリオ
「それもそうか…
ま、どっちにしろ、今日はウチを出ない方が良いな」

ルイージ
「そうだね」


昨日の内にモンスター退治が終わってよかったと、
この時2人は思った。

だが、現実はそう甘くなかった…

それは、キノール氏が次のニュースに移ろうとした時に起こった。
彼が次のニュースの原稿を読もうとした時、
横から全く別の原稿が差し出される。

そして、差し出された別の原稿を見て、
キノール氏は次のように言った。


キノール氏(テレビ)
『ここで臨時ニュースです。
昨日発生した、季節はずれの超大型低気圧は巨大かつ最強クラスの勢力を持つ台風となり、
本日の午後にキノコ王国に直撃する模様です。
住人の方々は急いで避難するか、家の補強をすると良いでしょう』

マリオ
「なるほど、午後に最強クラスの台風が…って、何だとおー!?」

ルイージ
「何でこのタイミングで台風が!?しかも、まだ4月なのに…」

マリオ
「ともかく、補強だ補強!」

ルイージ
「補強?避難しないの?」

マリオ
「命狙ってる奴が何処かにいるかもしれないのに、
避難なんかできるか!
それに、家を吹っ飛ばされた時には、決まってロクな事がない!」

ルイージ
「そうは言うけど、この時期に台風なんか来なかったから、
補強に使う道具なんて用意してないよ…」

マリオ
「木の板と釘は?」

ルイージ
「あったと思うけど…」

マリオ
「だったら、そいつで間に合わせよう。
あるだけ全部持って来い!」

ルイージ
「分かったよ兄さん!」


マリオに言われ、
ルイージは倉庫へと向かうと、木の板と釘を急いで全部かき集め、
兄の元へ戻ってくる。


ルイージ
「ゼェ…ハァ…に、兄さん。
木の板100万枚と…釘1000万本持ってきたよ…!」

マリオ
「多ッ!…つーか、まだそんなにあったのかよ」

ルイージ
「けど、これだけあれば、何とかなるんじゃない?」

マリオ
「そうだな。道具も揃った事だし、補強に行くか!」


と言う訳でマリオ兄弟は、板と釘、
そして作業用のトンカチやハシゴを持って、外へと向かう。


だが、まさかこの後、
台風以上の驚異が自分達の元にやって来ようとは、
誰も予想だにしていなかっただろう…

そして…







歴史を揺るがす、大事件と大冒険をする事になる事も…







       プロローグ終わり。

              第1話へ続く・・・

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