メタルの怪物

〜第1話:メタルの怪物…〜


板と釘を持ち出し、外へ出たマリオ兄弟は、
いよいよ決死の補強作業に突入しようとしていたが…


ルイージ
「あ、そうそう兄さん。僕、玄関で待ってるから」

マリオ
「はあ?何でだよ!」

ルイージ
「だってほら、テレビで言ってた奴が来ちゃいけないじゃない。
だから、ここで見張りでもしようかなと…」

マリオ
「なるほど!さすがはルイージ、持つべきものは弟だな!」

ルイージ
「そう言う訳で、兄さん頑張って」

マリオ
「OK!」


マリオは、ルイージの提案に賛同すると、
家の横に移動し、ハシゴを掛けて屋根まで登ると、
板と釘を使っての補強作業を開始する。


ルイージ
「(よし!補強作業って面倒だから嫌いなんだよね。
事件を利用するのも気が引けるけど、
こうでもしないと、兄さん僕にも作業やらせるから、仕方ない仕方ない)」


上手く言いくるめられたとも知らずに…





午前8時10分…

キノコタウン都市部のターミナル駅のホールでは、
巨大なテレビに先程のニュースが流されており、
おまけに台風の接近により、運行を中止するアナウンスが、
施設内で流れていた。


キノピオの社員
「何だって!?これじゃあ仕事に行けないじゃないか!」

キノピオの学生(社員の息子)
「マリオさんを狙ってる人の事件といい、
嫌な世の中になったね、父さん…」


足止めを食らい、そのような会話をする親子。
そのマリオを狙っている何者かが、
足元の床になりすましているとは知らずに…


何者か(床)
「(あの女、あの白いボロ布も助けていたか。
おまけに、私の存在もちらつき始めている…
早急にこの街を捜索し、ターゲットを発見する必要があるな)」


そして、何者かはキノピオの社員の足元に触れつつ、
ターミナル駅を後にした。


キノピオの社員
「ん?」

キノピオの学生
「どうしたの、父さん?」

キノピオの社員
「今、足に何か当たったような気がしたんだが、
気のせいだったようだ」





午前8時15分…

キノコ警察署の前で、
ノコノコの男性刑事が自販機でジュースを買っていた。

キノコ警察署の特別係の『カメリク刑事』である。


カメリク刑事
「たく、何でこの警察署は外にしか自販機ねぇんだよ」


愚痴りつつカメリク刑事は、空を見上げた。
台風が近づいているからか、
空は暗い雲に覆われ、強めの風も出てきている。


カメリク刑事
「…こりゃ、ニュース通りになりそうだな。
今日の勤務は、午前で終了か…イッテ!?」


と、呟いていると、カメリク刑事に誰かがぶつかる。


キノピオの社員
「あぁ…すみません!急いでいたもので…」


それは、先ほど駅にいたはずの、キノピオの社員であった。


カメリク刑事
「たく…気を付けろよ?」


注意するカメリク刑事。


キノピオの社員?
「(ピピピ…接触相手分析…。ピピピ…分析完了…
キノコ警察署特別係の、カメリク刑事…
マリオの居場所を知っている可能性100%…)」


一方、キノピオの社員は何者かのごとく、
カメリク刑事を分析していた。
どうやら、本物のキノピオの社員ではないようである。


偽キノピオの社員
「あの…キノコ警察署特別係のカメリクさん、ですよね?」

カメリク刑事
「ん?そうだけど、どうして俺の事知ってるの?」

偽キノピオの社員
「アナタ方警察の活躍は、テレビで良く見てますから…」

カメリク刑事
「あぁそうか。それなら納得♪」


あっさり納得してしまうカメリク刑事。
そんな彼の反応に、偽のキノピオの社員は、
単純な奴だと思いながら話を進める。


偽キノピオの社員
「それで、有名なアナタに、聞きたい事がありまして…」

カメリク刑事
「なんだ?キノコ警察署特別係のカメリク様に何でも聞いてくれ!」

偽キノピオの社員
「マリオさんは、どちらにいらしてましたっけ?」

カメリク刑事
「あぁ、マリオか?あの人なら、
この街の西入口の門の側に土管の先にある家にいるけど?」

偽キノピオの社員
「西入口の門の側の土管に入れば良いんですね?
ありがとうございます。
これでやっと、彼に会うことができますよ」

カメリク刑事
「どういたしまして。
けど、何の用があるのか知らねぇけど、気を付けなよ?
台風が近付いてるみたいだしよ」

偽キノピオの社員
「ご忠告どうもありがとうございます。
では、これで…」


キノピオの社員の偽者は、
そう言って一礼するとその場を後にした。


カメリク刑事
「さて、俺も部署に戻らないと…」


彼を見送ると、カメリク刑事も署内へと戻っていく。
しかしこの時、偽キノピオの社員の無表情な顔に、
影が掛かっていた事など彼は気付くよしも無かった…





コーン!コーン!


午前8時半頃…

マリオ兄弟の家では、
マリオが屋根の補強の為、釘を打ち付けている音がこだましていた。


ルイージ
「ふわ〜あ…玄関で見張りするのも暇だなぁ…」

マリオ(屋根の上から)
「おい、しっかり見張っとけよ?
怪しい奴が来るかもしれないんだから」

ルイージ
「分かってるよ。だから、兄さんは安心して作業を続けてよ」

マリオ
「ヘイヘイ…」


ルイージとそのような会話を交わしたのち、
作業に戻るマリオ。

玄関の見張りが、実はサボる為の口実である事を知らずに…


ズムズムズム…

と、その時。
家からキノコタウンへ続く土管から、誰か出てくる。


ルイージ
「! …あれ?」


ルイージは、一瞬身構えるも、すぐに警戒を解く。

何故なら…



ルイージ
「何だ、カメリクさんかあ…」


そこにいたのは、警察署に戻ったはずのカメリク刑事だったのだ。


カメリク刑事?
「(ピピピ…分析完了…
服装はターゲットと似ているが、それ以外の部分に差異あり。
だが、データベースに該当者あり…
ターゲット、マリオの弟であるルイージの可能性100%…)」


無論、本物のカメリク刑事である訳がなく、
彼は、ルイージを分析したのち、本人と断定すると、
ノコヤマ刑事のフリを始める。


偽カメリク刑事
「何だとは何だよ?
せっかく、特別係の俺様が来てやったってのによ」

ルイージ
「ごめんごめん。けど、こんな時に何の用ですか?」

偽カメリク刑事
「あれ?テレビの報道、まだ見てないのか?」

ルイージ
「テレビの報道って…
あ!ひょっとして、兄さんの命を狙ってる奴の事?」

偽カメリク刑事
「そうそう!
その件に着いて、マリオに話し聞きに来たんだが、
今何処にいるんだ?」

ルイージ
「兄さんなら、今屋根の補強やってて手が離せないんですよ」

偽カメリク刑事
「へぇ、屋根の補強ね…」


カメリク刑事の偽者は、屋根の方に目を向けるも、
マリオは屋根の真ん中辺りで作業しているらしく、
玄関からでは姿を確認できなかった。


偽カメリク刑事
「(ここからでは姿が見えんが、問題無い。
家の中から爆破してやれば良いだけの事…)」


偽者のカメリク刑事がそのような事を考えていると、
ルイージは次のように振る。


ルイージ
「とりあえず、兄さんの作業が終わるまで、
中で待っててください。
外こんな天気だし…」

偽カメリク刑事
「お!そりゃありがたいなあ」


こうして、ルイージは目の前のノコヤマ刑事が偽者だと知らず、
家に入れようとする。


ズムズムズム…

…が、その時。
自宅前の土管から、新たな人物が姿を見せる。

それは、嫌みそうな顔をしたキノピオの男性刑事であった。


偽カメリク刑事
「ん?」

ルイージ
「あれ?アナタは、捜査一課のイヤミンさん?」


それは、カメリク刑事と同じキノコ警察署の『イヤミン刑事』。
お互い部署違いではあるが、
どうやら警察になる以前から、因縁があるらしい。


イヤミン刑事
「あ…!特別係のカメリクぅ!
テメェ、なんでここにいやがるんだよ!?」


その為、カメリク刑事(偽者だが)の姿を見て、
驚きと文句が入り混じったような発言を取る。


偽カメリク刑事
「(どうやら、コイツの知り合いらしいな。
ここは、合わせておくか…)何だよ?いちゃワリィかよ?」

イヤミン刑事
「ワリィも何も、特別係の調査命令はまだ下りてねぇぞ!
勝手な事すんじゃねぇ!」

偽カメリク刑事
「別に良いじゃねぇか。つーか、オメぇこそ何しに来たんだよ?」

イヤミン刑事
「ここに来てるテメェなら、大体想像つくだろうが!
この特別(笑)ガメ!」


この一言で、偽者のカメリク刑事は、
彼も昨日の件について、マリオに聴取を取りに来たのだと確信する。


偽カメリク刑事
「(コイツも同じ目的でここに来たのか。
これは好都合…これならばルイージも、
私を完全に信用して、中に入れてくれる事だろう…)」


偽カメリク刑事がそう考えてるとは知らずに、
イヤミン刑事はあれやこれや言って来る。

そこに、ルイージが割って入る。


ルイージ
「ま、まあまあ2人共、目的はおんなじなんですし、
2人一緒に兄さんの話を聞けば良いと思いますよ」

偽カメリク刑事
「お?さすがルイージ、言ってくれるじゃねえか!」

イヤミン刑事
「はあ?こんな野郎と一緒に聴取何か取りたくねぇよ!」

偽カメリク刑事
「おいおい、刑事が捜査に選り好みして良いのかよ?」

イヤミン刑事
「うっせえよ、このバカm…」


「このバカメ!」と言おうとしたその時、
イヤミン刑事のズボンポケットの中にある
携帯電話の着信音(曲は相棒シーズン11のオープニングテーマ)が鳴った。


イヤミン刑事
「チッ!こんな時に…ちょっと待ってろ」


イヤミン刑事は、2人をその場に待たせると、
携帯に出るために一旦その場を離れ、
携帯電話を開いて画面に目を通す。


イヤミン刑事
「え…?」


そこに表示された、電話を掛けてきた相手の名前を見て、
イヤミン刑事はどう言うわけか違和感を感じるような素振りを見せると、
ルイージと一緒にいるカメリク刑事に目を向ける。
その後、すぐに携帯に目を戻し、電話に出る。


イヤミン刑事
「もしもし…?」

カメリク刑事(電話)
『おう出やがったなあ?捜査一課のイヤミぃン!』


すると、電話の向こうから、
今この場にいるはずの、カメリク刑事の声が聞こえてくる。

そう、本物のカメリク刑事が、電話を掛けてきたのである。


イヤミン刑事
「え?えぇ…!?」


その場にいるはずの人物から電話が掛かってきて、
イヤミン刑事は、再度ルイージの横にいる人物を確認。
やはり、そこにいるのもカメリク刑事であり、
彼から電話が掛かってきたことに困惑するが、
本物のカメリク刑事はそんな事知らずに、喋り始める。


カメリク刑事(電話)
『あれ?珍しいな、言い返してこないなんてよ』

イヤミン刑事
「お、おい…お前本当に、カメリクか?」

カメリク刑事(電話)
『あ?何言ってんだお前?
特別係のカメリク様に決まってんだろ?』


電話の相手もカメリク刑事だと答える為に、
イヤミン刑事は再度、この場にいるカメリク刑事に目をやる。


イヤミン刑事
「(おいおい待てよ…
電話の相手が本物のカメリクなら、ここにいるカメリクはいったい誰なんだよ)」


ようやく、この場にいるカメリク刑事に疑問を感じ始めるイヤミン刑事。

一方、カメリク刑事は、相変わらずそんな事など露知らずに、
次のように話しを進める。


カメリク刑事(電話)
『それよりよイヤミン、刑事部長から伝言だ。
「午後の台風が強過ぎるから、今日の勤務はもう終わりだ」ってよ。
マリオへの聴取も明日に回しとけとの事だ』

イヤミン刑事
「あ、あぁ…所でお前、今何処にいるんだ?」

カメリク刑事(電話)
『え?キノコ警察署だけど?』

イヤミン刑事
「分かった。じゃあ、気をつけなよ」

カメリク刑事(電話)
『おうよ!』


カメリク刑事がそう言うと、電話は切れる。
イヤミン刑事は携帯を閉じると、
表情新たにルイージと偽カメリク刑事の下に戻っていく。


カメリク刑事
「これでよしっと…
けど、アイツやけに素直だったな…
まあいっか、部長に押し付けられた頼み事も終わったし、
ウチに帰ってカメコの飯でも食うかな」


一方、本物のカメリク刑事は、偽者がマリオ兄弟の家に現れたなど知らず、
家へ帰って行った。

そして、視点はイヤミン刑事らの元へ戻る…


ルイージ
「誰からだったんですか?」

イヤミン刑事
「知り合いの野郎だった」

偽カメリク刑事
「そうか。じゃ、早いトコ中に入ってマリオを…」

イヤミン刑事
「いや待て!」


と、家の中に入ろうと言う話しになった所で、
イヤミン刑事は2人を制止する。


ルイージ
「え?」

偽カメリク刑事
「急にどうしたんだよ?」

イヤミン刑事
「お前、誰だ?」

偽カメリク刑事
「はあ?」

イヤミン刑事
「誰だって聞いてんだよ!」

偽カメリク刑事
「特別係のカメリクだけど?」

イヤミン刑事
「じゃあ、さっき俺に電話掛けてきた奴は誰だ?
今の電話、お前からだったぞ?」

偽カメリク刑事
「え?」

ルイージ
「まさか…間違い電話じゃないんですか?」

イヤミン刑事
「だったら、コイツを見な。
何で今さっき掛かった電話が、
お前の携帯から掛かったものになってんだ?」


そういってイヤミン刑事は、
携帯の着信履歴を偽者のカメリク刑事に見せ付ける。
確かにそこには、
ついさっき本物のカメリク刑事から電話があった事が示されていたが、
偽者のカメリク刑事は、動揺する素振りも見せずこう答えた。


偽カメリク刑事
「あぁ…実は、来る途中で携帯なくしちまってよ。
きっと拾った誰かが俺のフリして、
お前にイタズラしたんだな」

イヤミン刑事
「そうか…あくまで自分は本物だと言い張るか」

偽カメリク刑事
「当たり前だ。本物なんだからよ」

ルイージ
「そうだよ、イヤミンさん。
どっからどう見ても、本物のカメリクさんですよ?」


シラをきり通す偽者。
おまけに、ルイージも本物だと信じ込んでいるようだ。


イヤミン刑事
「(だったら、あの手を使うか…)
それじゃあ、計算問題を1つ出してやる。
それに答えられたら、本物のカメリクだと信じてやろう」

偽カメリク刑事
「良いぜ?どんな計算問題だって答えてやらぁ!」

イヤミン刑事
「じゃあ問題だ。
『2014318』に『200063』を足すと、いくらになる?」

偽カメリク刑事
「2214381だ」

イヤミン刑事
「…………」


と、速攻で答える偽カメリク刑事。
そんな彼をイヤミン刑事はしばらく見つめると…


イヤミン刑事
「…なるほど、よーく分かった……」

偽カメリク刑事
「フゥ…やっと本物のカメリク様だと分かってくれたか…」

イヤミン刑事
「あぁ…」






イヤミン刑事
テメェが偽者だって事がなッ!!


そういってイヤミン刑事は、
懐から拳銃を出して偽カメリク刑事に向ける。


偽カメリク刑事
「おおお、おいおいおい!何でだよ!?」

ルイージ
「そうですよ!
カメリクさんは、ちゃんと問題に答えたのに、なんで…」

イヤミン刑事
「だからだよ」

ルイージ
「え?」

イヤミン刑事
「アンタらは知らねぇようだから教えてやるがな、
カメリクは、小学生レベルの簡単な計算式しか解けないような、
バカガメ野郎なんだ(実は俺もだけど黙っとく)
そんな野郎が、あんなデタラメな計算問題出されて、
即座に答えられる訳がねぇんだよ!」

ルイージ
「そ、それじゃあ…!」

イヤミン刑事
「このカメリクは、偽者だ。だからさっさとはn…ッ!?」


ザクッ!

離れろとイヤミン刑事が言おうとしたが、
突然胸に激痛が走り、その言葉が遮られる。

何故なら、偽カメリク刑事の左腕が、
金属質の剣か槍のようなものに変化し、彼の胸を突き刺していたからである。


偽カメリク刑事
「…貴様のような古代人に、いっぱい食わされるとはな……」

イヤミン刑事
「て…テメェ…!ガフッ!」


偽カメリク刑事は、突き刺した腕を引き抜くと、
イヤミン刑事は血を吐いて倒れた。


ルイージ
「イヤミンさん!お、お前はいったい…!」


右腕を変形させると言う、
明らかにノコノコではない事を象徴するかのような行動を取った、
偽カメリク刑事に、ルイージは何者かとたずねる。


偽カメリク刑事
「家の中から、ターゲットを爆破する予定だったが、
バレてしまっては仕方がない。
直接的な殺害を決行する…」


ヒュンヒュン!

だが、偽カメリク刑事はルイージの問いを無視すると、
今度はルイージを右腕で斬ろうとする。


ルイージ
「うわ!」


最初の攻撃が、左頬をかすったものの、
ルイージは、以降の攻撃を何とかしてかわす。


マリオ
「フゥ…やっと真ん中の補強が終わった。
こんな調子で、昼まで間に合うかな…」


作業の一部を終わらせるも不安そうにするマリオ。
その時、玄関の方から、
偽カメリク刑事に襲われるルイージの声が聞こえてくる。


マリオ
「何か下が騒がしいな。どうしたんだろ?」


それが気になったマリオは、とうとう玄関の上から顔を出してしまう。


マリオ
「おーいルイージ、いったいどうし…」

ルイージ
「! 兄さん来ちゃダメ!」


と、ルイージが叫んだが時既に遅し…

マリオの声に反応した偽カメリク刑事が、彼の方に目を向けてしまった。


偽カメリク刑事
「ピピピ…分析開始…。ピピピ…分析完了…
帽子のマーク、顔、色、服装…全てがデータと一致。
マリオ本人である可能性100%…」


偽カメリク刑事はマリオを分析すると、
ルイージを攻撃するのを止め、家の壁に向かって走る。

すると、信じられない事が起きる。

何故なら彼は、自らの両足を銀色の液体のように変質させると、
その部分を壁にくっ付け、壁の上を疾走。
一気に屋根の上まで駆け上がってしまったのだ。


マリオ
「うわあ!?」


まさかの行動に、マリオは驚いて腰を抜かす。
一方、偽カメリク刑事は、右腕を構え…


偽カメリク刑事
「ようやく見付けたぞ、マリオ…
我らの未来の為、死んでもらう」


マリオに右腕を突き刺そうと襲いかかってきた!


マリオ
「!」


ザシュッ!

マリオは、一撃目の突きを横に転がってかわし、
ついでにジャンプで起き上がる。
狙いを外した偽カメリク刑事の腕は、屋根に突き刺さるが、
すぐに引き抜くと、執念にマリオを突きに掛かる。


マリオ
「おっと…と!」

ルイージ
「兄さん!今助けに行くから待ってて!」


そう言ってルイージは、ハシゴを伝って屋根に登ろうとした。
だが、偽カメリク刑事は、右腕を元の手の形に戻したかと思えば、
みょいんと伸ばして、ハシゴを押し倒した。


ルイージ
「う、う…うわあー!」


ガシャーン!

ハシゴごと倒されたルイージは、
ハシゴの下敷きとなって身動きが取れなくなった。


マリオ
「ルイージ!」

偽カメリク刑事
「これで邪魔者はいなくなった…」


ズバババババ!

偽カメリク刑事は、
今度は左腕をバルカン砲のような形状に変形させると、
銃弾でマリオを攻撃する。


マリオ
「うわ!危ねぇ!」


銃弾の荒らしに逃げ惑うマリオ。

そして…!




マリオ
「うおぉおぉぉっ!?」


ドッシーン!

逃げるのに必死になり過ぎて、
屋根から玄関の辺りに落っこちてしまった。


マリオ
「イッテテテテ…あっ!」


落下の衝撃で体が痛む中、
マリオの目に屋根の上に立つ偽カメリク刑事の姿が入る。
改めて見ると、彼の目は機械のように生気がなく、
右腕が変形した槍の様なものが、不気味にギラギラしていた。


偽カメリク刑事
「………」


そして、偽カメリク刑事は、屋根から飛び降り、
マリオに槍のようなものを突き刺そうと急速落下する。


マリオ
「う、うわー!」


マリオは、すぐに逃げようとするが、
落下の痛みのせいだろうか、体はすぐに動いてくれない。


ルイージ
「兄さーん!」


そこに、やっとこさハシゴの下から這い出てきたルイージがやってくるも、
今から助けに行っても、手遅れなの目に見えている。

そして、もうすぐ槍の様なものがマリオに刺さる距離まで、
偽カメリク刑事は落下してきたが…




ドグァ――ン!

突然、偽カメリク刑事の体に爆発が発生した。


偽カメリク刑事
「!?」


ドグシャア――ン!

その爆発は、爆発物をぶつけられてのものだったらしく、
偽カメリク刑事は、
マリオ兄弟の自宅玄関をブチ破るほどの勢いで吹っ飛んだ。


マリオ
「え…?」

ルイージ
「兄さん!良かったあ…」

マリオ
「ルイージ。今のは、いったい…?」




???
「私がやったんだ」


偽カメリク刑事が吹っ飛ばされた事を、
不思議がるマリオ。
すると、その背後から女性の声がしたもので振り返ると、
そこには見慣れぬ女が立っていた。

ランペルやワリオを助けた、謎の女だ。


マリオ
「あ、アンタが助けてくれたのか?」

謎の女
「そうだ。間に合って良かった…」

ルイージ
「き、君はいったい誰なの?」

謎の女
「話したいのは山々だけど、今はそのような状況では無い」

ルイージ
「え?」

謎の女
「アレを見ろ」


ガッキョン…ガッキョン…ガッキョン…

そう言って女は、偽カメリク刑事が吹っ飛んだ先を指差すと、
マリオ兄弟もその先に目を向ける。
すると、玄関が破壊された際に舞い散った、
細かな木の破片やほこりの中から、独特の足音を立てながら、
ゆっくりと歩く『ある者』が姿を見せる。

その者の姿は、一言で表せば、トゲのように尖った鼻と、
赤いライトのような瞳が浮かぶ真っ黒に吊り上がった目を持つ、
メタルマリオと言った感じのものであった。


マリオ
「あ、アレは…メタル化した、俺?」

ルイージ
「こ、コイツがカメリクさんに化けてたんだ…」

マリオ
「けど、何なんだアイツ?まさか、新種のメタルもどき…?」

謎の女
「違う…奴は、
『マリオネーター・サイバーキノコ・テックボット-第1000号』。
メタルもどきではない」

マリオ
「ま、マリオネーター・サイバーキノ…?」

謎の女
「覚えられないなら、『M-1000』と呼べば良い。
奴は、今から600年後の世界のテクノロジーによって生み出され、
君の殺害の為に送り込まれた抹殺兵器だ」

マリオ
「お、俺の殺害?600年後の世界?
つーか、何でアンタ、俺の事知って…わっ!?」


分からない事だらけなマリオであったが、
その隙にと言わんばかりに、M-1000と呼ばれたメタルの怪物が、
右腕を剣の様な形に変形させると、無言で斬りかかって来た。


マリオ
「クッ!なんだか良く分からんが、降りかかる火の粉は払うのみ!
『ファイアボール』!」


ボッボボッ!

マリオは、M-1000の攻撃を避けながらファイアボールを放つが、
命中した所からかき消えるように消えてしまい、
効果が無かった。


マリオ
「効いてない!?」

謎の女
「奴のボディを構成する液状ナノマシンは、
アンチエレメント性の改良型だ。
エレメント攻撃でダメージを与える事は出来ない」

マリオ
「何だと…うおっ!?」


と、マリオが驚く中、M-1000は彼を斬ろうと、
腕を振り回し続ける。


謎の女
「! 止めろ!」


ガキーン!

それを見た謎の女は、
自らの左手首を回して取り外したかと思うと、
何とその部分からナイフのような刃が出てくる。

そして、その出てきた刃で、M-1000の剣を受け止めた。


M-1000
「む…?」

マリオ
「なっ…!?」

ルイージ
「き、君、その手…!」

謎の女
「これか?見ての通りの義手だッ!」


ドカッ!

と言いながら、謎の女はM-1000を蹴るが、
M-1000は、腹部をグニャりとさせて、
彼女の蹴りを和らげると、逆に彼女を蹴り返してしまう。


謎の女
「グッ…!」


蹴り返された謎の女は、うめき声を上げながら、
イヤミン刑事の側に飛ばされる。


マリオ
「おい、大丈夫か?」

謎の女
「あぁ…
しかし、私の蹴りを和らげてしまうとは…
奴には、骨格が入っていないのか?」

ルイージ
「ねえ、それより逃げた方が良いんじゃない?
アイツ、何だかヤバそうだよ…」

謎の女
「賢明な判断だ。しかし…」


と、彼女は側にいたイヤミン刑事に右手をかざす。
すると、彼の体を優しい光が包み込み、
M-1000に刺された胸の傷を小さくした。


謎の女
「逃げるなら、この人と一緒に逃げろ」

マリオ
「い、今のは?」

謎の女
「『いたいのとんでけ』で、彼の傷を浅くした。
後は、病院で治療してもらえば、問題無い」

マリオ
「それって確か、ピーチ姫の…はっ!」


そんなやり取りをしていると、
M-1000がまたこちらに向かって来る。


謎の女
「『ヒステリック・ボム』!」


ズガガガガガアァァ――――ン!!!

それを見た謎の女は、
今度は魔法で作りだした複数の爆弾をM-1000に投げ付け、
足止めをする。


マリオ
「ヒステリック・ボム!?アンタ、どうしてピーチ姫の技を…ッ!?」


と、マリオが言いかけたその時、
謎の女がこちらに振り返るのだが、その顔を見て何故か固まってしまう。

彼女の顔は、
この世界の人間とするには場違いな程綺麗であったのだが、
その顔立ちと振り返る際になびく金髪は、ピーチ姫に良く似ており、
更に、耳の前には自分の揉み上げに酷似した形状の、髪が存在していた。

この顔を間近で見た瞬間、マリオは彼女が他人では無いように感じた。


謎の女
「マリオ…?どうした、早く逃げろ!」

マリオ
「あ…?あぁ!けど…」

ルイージ
「君は逃げないの?」

謎の女
「出来るならそうしたいが、
M-1000が追いかけてきてはいけない。
私は、ここで奴を食い止める。
だから、彼を病院に連れて行ったら、何処か安全な場所に避難してくれ。
私も後で追い付くから」

ルイージ
「分かったよ」

マリオ
「また後で、会おうな!」


そう言って2人は、イヤミン刑事を抱えて土管へと消えて行く。


M-1000
「逃がさん…」


それを見たM-1000は、自らを液状化させてヒステリック・ボムから脱出。
土管へ向かおうとするが、
謎の女が物凄いスピードで先回りして来た為に、行く手を遮られる。


M-1000
「そこを退け…対抗軍の差し金よ」

謎の女
「ほう、私が対抗軍の者だと気付いていたか」

M-1000
「あぁ。そして、たった今思い出した…
貴様は、あの時我々を破壊した者だな?」

謎の女
「あの時…?じゃあ、お前はやはり、ひと月前の奴の完成型か?」

M-1000
「その通りだ。
まさか、任務の先でまた貴様と会いまみえるとは…」

謎の女
「奇妙な偶然だな。しかし、かと言って
あの人を…マリオを抹殺させる訳にはいかない!」

M-1000
「残念だが、完成型となった私に、貴様は勝てない。
あの時の決着も兼ねて、排除する…」

謎の女
「やれるものなら、やってみろ!」


対峙する両者。

しかし、M-1000は、何故マリオの命を狙っているのだろうか?

そして、この謎の女はいったい…?





       第1話終わり。

              第2話へ続く・・・


〜あとがき〜



R版第38部、第1弾完成。
原文との違いを…

プロローグ・・・冒頭と終盤は、原文の序盤を分けていますが、
他はオリジナル展開。
メガバッテンは、この時点では登場していないのですが、
R版では早めに登場。
このようなものを追加したのは、実は理由があるんですが、
それはネタバレになるので、伏せさせてもらいます。


M-1000に襲われたランペルとワリオ・・・原文ではM-1000が動いている伏線として、
新聞で語られる程度(つーか、当時書き込んでた自分が、
無理矢理捻じ込んだ)でしたが、R版では襲われる場面を追加。
特にワリオは、『エムブレームM(R版オリジナルバッジ)で、
マリオカラーになっていたせいで、本物と間違われて襲われた』という理由付けをしました。

ちなみに、原文では沈没船のドッペルマリオも襲われた事にしていましたが、
R版のM-1000は、
オドロン寺院からダイヤモンドシティを経由してキノコタウンに向かった事にしたので、
R版での被害者は彼らのみです。
当然ながら、クラウダもナインボルトも、原文では未登場。

また、彼らの現状をマリオ兄弟に鮮明に知らせる為、
新聞から台風の臨時ニュース前に流れていた、
事件のニュースのインタビューに変更しました。


M-1000・・・結構変更点を加えたキャラ。
まず、名前をターミネーターのパロディである事を分かりやすくする為、
マリオネーターに変更(原文ではメタル・リキッド・ソルジャー1000式という名前)
容姿がマリオそっくりなのは原文と同じですが、
R版では鼻と目付きに差異があると言う設定にしました。
また、マリオの姿をしている理由もR版では追加していますが、
それはまた後のエピソードで語らせます。

相手を分析したりする能力を追加。
また、原文ではワリオに化けて、プレゼント(多分爆弾)を渡しに
マリオ兄弟の自宅にやって来ていましたが、
R版では、先の通りワリオ達の事がニュースになっている事を知っているので、
警察官のカメリク刑事に変更しました。

意識はしてなかったんですが、
調べてみればT-1000も最初は警察官に化けてターゲットに近付いていたので、
ある意味原作再現になったかなと。


謎の女・・・原文では大分遅れて現れた感じでしたが、
R版では、M-1000がランペルを襲撃した後に変更。
更に容姿の詳細な設定も追加(原文では、『マリオの世界とはちょっと場違いな綺麗な女性』の説明があるのみ)
この変更に伴い、マリオ兄弟に出会う前から動いていた事となりました。

また、義手にギミックを追加。
せっかくの義手なので、ギミックは多い方が面白いし、
その方が戦いやすいはずなので。

原文では、ピーチ姫の技はヒステリック・ボムしか使っていませんでしたが、
R版は回復魔法も使用。
更に、マリオがその点を指摘するシーンも追加。
ていうか、何で原文だと誰も突っ込まなかったんだろうか…

また、彼女の口調が男口調なのは、ある設定を強調する為です。


特別係のカメリク刑事と捜査一課のイヤミン刑事・・・両者共に相棒の亀山薫と伊丹憲一…通称イタミンが元ネタ。
どちらも原文にいないオリキャラ。
実は、未だ未公開あるパロディキャラのスピンオフ小説で先に出したキャラで、
実は書いた順番的には、今作が初登場では無かったりします。
日の元に曝したのは、初めてだけど。

最後に、イヤミン刑事が偽カメリク刑事に出した計算問題の数字は、
相棒が最初に放送された日と、シーズン13が終了した日が元ネタです。


以上です。

今作は、既にあるサイトでまとめが終了している為、
それを参考にしている部分(今回のイヤミン刑事が偽カメリク刑事の正体を見破る方法など)
もありますが、あちらとは違った路線で突っ走っていきたいと思います。



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