潜入 1



〜第4話:潜入〜


午前10時40分―――

スペースオバキュームで飛び立ったマリオ達は、既に大気圏を突破して宇宙へ飛び出し、
月へと向かっていた。その途中、ルイージがオバキュームを操縦しながらある疑問をイリアに投げかける。


ルイージ
「ねえイリア。ちょっと気になってたんだけどさ、君はどうやってM-1000や僕達の後を追いかけたの?」

マリオ
「そう言や、あの時俺達は、地下道に逃げるなんてまだ決めてもなかったのに…
一体どうやって突き止めたんだ?」

イリア
「コイツを使ったのさ」


そう言ってイリアは、先程から腕にしていた腕時計型のデバイスを彼らに見せた。


マリオ
「それは?」

イリア
「『ウォッチデバイス』…対抗軍の戦士に支給されている、多機能デバイスさ。
コイツの見えない足跡を辿る『アシア・トレース』という機能を使って、M-1000やアナタ達の足跡を追ってきたんだ」

マリオ
「じゃあ、さっきルイージの偽者を見破ったのも、そいつのおかげって訳か」

イリア
「そう言う事…あ」


ふと、イリアが前方に目を向けると、そこには黄色くて丸い巨大な衛星…
メガバッテンのアジトがある月が見えてきた。


イリア
「見えてきたな」

ルイージ
「けど、肝心のアジトが見えないよ?」

マリオ
「奴らのアジトは月の裏側にあるんだ。正面に作ったら、望遠鏡とかで見付かってしまうからな」

ルイージ
「じゃあ、裏まで回る?」

マリオ
「いや、このまま降りよう。ヘタにアジトの近くに降りて見付かりでもしたら、厄介だ」

ルイージ
「OK!」


こうして、彼らはそのまま月へと降りると、裏側にあるアジトへ歩いて進む事となるのであった。



午前10時45分――

メガバッテンのアジト最下層の、テックIIの部屋にバツガルフが訪れていた。


バツガルフ
「お前達、TEC-XX Mk.IIの開発は順調か?」

研究員A
「おぉ、バツガルフ様、丁度良い所に!ただ今、回路やプログラムの大半が完成した所です」

研究員B
「後は、頭脳回路を組み込み、起動させるだけです」

バツガルフ
「よくやった。で、頭脳回路は?」

研究員B
「今、ペケダー様が自室で制作中であります」

研究員A
「昨晩からずっとこもりっきりですから、もうじき出来るかと…」

バツガルフ
「そうか。ククク…我が望みをかなえる理想のコンピューターが、誕生する時が、ついに来た…」





午前11時15分―――

スペースオバキュームを降りたマリオ達は、ようやくアジトの前まで辿り着いた。


ルイージ
「はー…やっと着いた……」

イリア
「話しには聞いていたが、月面は体がフワフワして動きづらいな…」

ルイージ
「それはそうと、これからどうするの?」 マリオ
「問題はそれなんだよな…今回の目的は、あくまでバツガルフの説得。
いつもみたいに、正面突破と行くわけにはいかない。
なるべく穏便に近付きたいところだが…」

イリア
「…ん!?」


その時、突然イリアは2人を引っ張って、近くの岩陰に隠れた。


ルイージ
「うわ!?」

マリオ
「いきなりどうした?」

イリア
「誰か出てくる…」

マリオ兄弟 「「え?」」


イリアの言葉に2人はアジトに目を向けると、アジトのあるドームの中から3人の男が出てくる。
服装から軍団員なのは明らかだったが、何故か全員極めて薄い色をしていた。


ルイージ
「アレって確か…」

マリオ
「メガバッテンの軍団員だ。けど、見た事の無い色をしてるな…」

ルイージ
「もしかして、僕達が来た事にもう気付いたのかな?」 イリア
「静かに!何か話している」


イリアのいう通り、薄い色の軍団員はお互い会話をしているようだ。
そこで聞く耳を立ててみると、次のような会話が耳に入る。


薄い色の軍団員A
「…よし、誰も気付いていない。ヘヘヘ、1階なんて、暇すぎるフロアの見回りなんて、やってらるかっつーの」

薄い色の軍団員B
「だよねだよね。1階から侵入してくる奴なんて、ツキノシンエモンくらいしかいないのに…」

薄い色の軍団員C
「世界征服という刺激的な目標掲げてると聞いて、この組織に入ったのに…
これじゃあ警備会社にいた頃と、ほとんど変わらないじゃないか」

薄い色の軍団員A
「新入りだからってナメられたモンだぜ、全く!」


マリオ
「…サボりか」

ルイージ
「良かった。僕達に気付いた訳じゃなかったんだ」

マリオ
「しかも奴ら、新人のようだ。だから、あんなに薄い色しているのか?」

イリア
「シッ!まだ何か話している…」


イリアの言う通り、薄い色の軍団員もとい『新人軍団員』らは、まだ何か話しているようである。


新人軍団員A
「ところでよ。ペケダーの奴、
昨日の晩からずっと部屋に閉じこもってるんだが、お前なんか知らねーか?」

新人軍団員B
「知らないよ。仮病使ってサボってんじゃない?」

新人軍団員A
「あ、なるほどな。ヘヘヘ…幹部だからって偉そうにしといて、結局俺達と同じ穴のムジナかw」

新人軍団員C
「いや、どうやらそうじゃないらしいぜ」

新人軍団員A
「え?」

新人軍団員B
「それ、どういう事?」

新人軍団員C
「研究員達が話してるのをたまたま聞いたんだけどよ、
何でもアジトの一番下の部屋で何か作ってて、ペケダーはその部品を製作している最中なんだそうだ」

新人軍団員B
「何だってえ!?」

新人軍団員A
「そんなの初めて聞いたぞおい!」

新人軍団員C
「やはりお前達も知らなかったか…」

新人軍団員A
「あぁ。そんな面白話しを俺達にしないなんて…
組織の連中、新入りだからってとことんなまでにバカにしてやがるな!」


マリオ
「お、おい…今の話しってもしかして……」

イリア
「間違いない、テックIIの事だ。
しかも、ペケダーが部屋にこもってまで部品を作っていると言う事は…」

マリオ
「テックIIは、完成間近ってことか?」

ルイージ
「大変だ!早くしないと…!」

イリア
「いや、大丈夫だ。テックIIの処遇を決められるのは、バツガルフだ。彼さえ説得できれば問題無い。
むしろ、慌てて近付こうとする方が危険だ」


焦りかけるルイージをなだめるイリア。
一方、新人軍団員Cは、「愚痴っててもしょうがない」として、次のような事を提案した。


新人軍団員C
「それよりよ、せっかく月面に出たんだし、月の重力とやらをじっくり堪能しようぜ」

新人軍団員A
「そうだな。…あ!せっかくだし、誰が一番高くジャンプできるか、競争しねえか?」

新人軍団員B
「さんせーい!」

新人軍団員C
「…決まったな。じゃあ、始めるとするか!」


こうしてトリオは、その場でジャンプの高さの競い合いを開始した。


マリオ
「今度は遊び始めたぞ…」

イリア
「緊張感の欠片もないな」

ルイージ
「ねえ、どうするの?」

マリオ
「うーん…そうだ!2人とも、ここで待っててくれ!」


少し考えて何か思いついたマリオは、突然2人を置いて岩陰から飛び出す。


ルイージ
「え?ちょっと兄さん?何する気?」

マリオ
「まあそこで見てなって!」


と言って、マリオは月の重力で動きが鈍い中で、なんとか全力で走る。
そして、トリオがジャンプしたとほぼ同時に、その場からピョイ〜ンっと全力ジャンプ。
さすがはジャンプの名人だろうか、彼はトリオよりも高い位置まで飛び上がった。


新人軍団員A
「ん!?何だアイツは!?」

新人軍団員B
「俺らよりもあんなに高く…!」

新人軍団員C
「というか、誰だ!?まさか、しんny…ぐふっ!」


ポコン!

彼らが驚いているのも束の間、新人軍団員Cが降下してきたマリオに頭を踏みつけられた。


新人軍団員A
「な!…ガフッ!」

新人軍団員B
「げふっ!!」


ポコン!!パコン!!!

続けざまに、AとBがマリオに頭を踏みつけられる。
こうして、不意打ちを食らった新人軍団員トリオは、真っ逆さまに地面に落下し、気を失った。


新人軍団員トリオ
『…………』

マリオ
「さすがは新人。弱いな…
それはともかく、コイツらを運んでっと……」


マリオは、トリオが気絶したのを確認すると、彼らをルイージとイリアが待つ岩陰に移動させた。


マリオ
「これでよし…」

ルイージ
「兄さん?コイツらやっつけてどうするの?」

マリオ
「まだ分からないのか?
コイツらの服を着て、アジトに潜入するんだよ。丁度3人いる事だしな」

ルイージ
「あぁ、そう言う事ね」

イリア
「騒ぎ立てずに入る手段としては、基本中の基本だな。だが…」

ルイージ
「どうしたの?」

イリア
「この服、着れるのか…?」

ルイージ
「言われてみると…」

マリオ
「いや、大丈夫だろう。ピーチ姫も、コイツらに変装した事あるらしいし…」

イリア
「そ、そうなのか?」

マリオ
「あぁ。なんでも、バツガルフに話を聞くためにそうしたとか…」

イリア
「(私のもう1人のご先祖様、いったいどんな人だったんだろう…)」


こうして、イリアの中に先祖に対する1つの疑問が生まれた。
とにもかくにも、彼らはトリオが目を覚ます前に、服や頭巾、眼鏡を引っぺがして着用してみた。
(例によって引っぺがされた軍団員の姿は、隠させてもらう)


軍団員マリオ
「ムググ…何とか着れた……お前達の方は?」

軍団員ルイージ
「僕も…何とか……」

軍団員イリア
「私もだ。信じられない…」

軍団員ルイージ
「けど、凄く暑いよ?コレ…」

軍団員マリオ
「おまけに、臭くて鼻がムズムズする…潜入できると考えたら、安いものだが……」

軍団員イリア
「ところで、持ち物も確認しておいた方が良いんじゃないか?」

軍団員マリオ
「そうだな。アジトの中で役立つものを持ってるかもしれないし…」


そうして、マリオ達は新人軍団員の服の中などを入念にチェックしてみたが、
名札、ハンカチとポケットティッシュ、メモ帳が入っているくらいで、特に変わったものはなかった。


軍団員マリオ
「チェック完了。名札、メモ帳以外に特に目立ったものはないな」

軍団員ルイージ
「じゃあ、そろそろ行く?」

軍団員マリオ
「もちろんだ」


何とか変装できたマリオ達は、アジトのあるドームに侵入。
エスカレーターを上ってアジト内に入ってみると、早速見張りのエリート軍団員2人と出くわした。


軍団員ルイージ
「うわ!早速…」

軍団員マリオ
「しかもコイツら、あの時(ペーパーマリオRPG参照)の…」

軍団員イリア
「早速、騙されてくれるかどうかのテストか…」


聞こえないように気を付けながら会話をする3人。一方、エリート軍団員2人は、彼らの顔をジッと見つめている。

バレるか、バレないか…

しばし緊張感が走る。そして…


エリート軍団員A
「…おい!」


口を開いたのは、エリート軍団員Aの方だった。
彼のその声に、マリオが「はい!?」と答える。すると、エリート軍団員Aはこう言った。


エリート軍団員A
「お前達、何故外から入ってきた?中で警備をしていたんじゃないのか!?」

軍団員マリオ
「あ?あぁ…実は、窓の外にツキノシンエモンを見付けまして…
追っ払いに行ってたんですよ、はい……」

軍団員ルイージ
「そ、そうそうそう!そうなんですよ!」

軍団員イリア
「…………」←無言でうなずいている。


と、誤魔化して見せる3人。それに対し、エリート軍団員2人は、怒鳴るようにこう返した。


エリート軍団員A
「おい、なに余計な事をしてるんだ!」

エリート軍団員B
「全くだ。ツキノシンエモンの見張りは、バリアーン達がやっているから、
我々が外に出る必要はないと前に言っただろう!」

軍団員マリオ
「あ、あぁ…そ、そうでした…!いやぁ新人なものでして…
(あのバリアーン達は、その為にいたのか…)」

エリート軍団員A
「なんと物覚えの悪い新入りめ!『罰』でこのフロアの警備に当たらされたという自覚が、無いようだな?」

エリート軍団員B
「後でバツガルフ様に言い付けておいてやるから、覚悟しておけ!」

エリート軍団員A
「その間、せいぜい持ち場でその時を待っておくんだな!」

軍団員マリオ
「は、はい…分かりました…」

エリート軍団員A
「だったらさっさと戻れ!ほら!!」


そう言ってエリート軍団員Aは、乱暴に3人をアジト1階の廊下に放り込んだ。


軍団員マリオ
「おーっとと!…乱暴だな」

軍団員イリア
「しかし、テストはクリアだな。
彼ら、服の中身が入れ替わっている事に気付いていないようだ」

軍団員ルイージ
「それにしても、凄い言われようだったね…」

軍団員マリオ
「おまけに、罰でこのフロアの警備をやらされているだなんて…
コイツら一体何やったんだ?」

軍団員イリア
「少し気になるが、今は目的が最優先だ。先に進もう」

軍団員マリオ
「そうだな。ここまで来たら、エレベーターは目と鼻の先だしな」


マリオの言う通りであった。アジトの地下に続くエレベーターは、彼らのいる廊下の真ん中…
文字通り、目と鼻の先にあったのだ。

そう言う事で、3人はすぐにエレベーターの前に立ったのだが…


軍団員マリオ
「…あれ?」


カチ、カチ…

エレベーターのドアの横にある赤いスイッチを押しても、反応が全くなかったのだ。
その代わり、次のようなメッセージが流れる。


エレベーターからのメッセージ
『エレベーターキーを入レテクダサイ…エレベーターキーを入レテクダサイ…』

軍団員ルイージ
「エレベーターキー?」

軍団員マリオ
「しまった!このエレベーターは専用のカードキーを入れないと、動かないんだった!」

軍団員ルイージ
「何だって!?けど…」

軍団員イリア
「さっき持ち物をチェックしてみたが、エレベーターキー何て入っていなかったぞ?」

軍団員マリオ
「おかしいな…軍団員はみんな持ってるんじゃないのか?」

軍団員ルイージ
「それより、どうするの?このままじゃ下の階に行けないよ」

軍団員イリア
「マリオ、あなたは以前、このアジトに侵入した事があるんだろう?その時はどうした?」 軍団員マリオ
「あの時は、奥の部屋の宝箱から見付けたが、
あれは俺達が来ることを見越して設置されたものだったからな…
今は、まともな場所で管理されている可能性が高いだろう」

軍団員イリア
「まともな場所で管理…となると、事務室辺りだろうな」

軍団員マリオ
「事務室か…この前来た時は、そんな部屋見掛けなかったが…」

軍団員イリア
「いや、そこにあるぞ」

軍団員マリオ
「…え?」


イリアの指差す方向にマリオが目を向けると、
そこには事務室という白いプレートが貼り付けられた、何処にでもある普通のドアがあった。


軍団員ルイージ
「他の扉と比べると、随分と普通だね」

軍団員マリオ
「あまりにも普通過ぎる…だからこの前、気付かなかったのか?
…まあ良いや。あそこでエレベーターキーの事を聞こう」


ガチャン…

こうして、事務室を見付けた3人は、ドアを開けて中へと入ってみる。
するとその先には、いかにもそれっぽい内装の部屋と、事務長のような格好のエリート軍団員が立っていた。


事務長のような格好のエリート軍団員
「うわ!お前ら、ノックせずにいきなり入ってくるな!」

軍団員マリオ
「も、申し訳ありません!えっと…」

事務長のような格好のエリート軍団員
「私は、ここのジムチョーだ!忘れるんじゃない、ダメ新人が!」

軍団員マリオ
「あ、はい…これまた失礼…
(カジオー軍団の工場職員連中みたいなノリの名前だな…)」

ジムチョー
「で、一体何の用だ?まだ勤務中だろ!」

軍団員マリオ
「あ…いえ…実は、エレベーターキーを無くしてしまいまして…」

ジムチョー
「…はあ?」


と、マリオは用件を話してみた所、ジムチョーは妙な反応を示した。
それはまるで、「お前は何を言っているんだ?」と言っているかのような…


軍団員マリオ
「あ、あの…ジムチョー?」

ジムチョー
「お前ら、本気で言っているのか?」

軍団員マリオ
「本気ですけど…ね?」


マリオに振られ、ルイージとイリアも話に合わせるべく首を縦に振る。
すると、ジムチョーは「カアー!」と呆れた様子で声を上げた。


軍団員マリオ
「あ、あの?どうしたんですか、ジムチョー?」

ジムチョー
「それはこっちの台詞だ!とんだダメ新人だと思っていたが、まさか物忘れまで激しいとは…
バツガルフ様は良くクビにしなかったものだ!」

軍団員マリオ
「物忘れが激しいって…?」

ジムチョー
「まだ思い出せんか?自力で記憶を引っ張り出す事が出来んとは、とことんダメな新人め!
…まあ良い、教えてやろう!
お前らのエレベーターキーは、今朝私が預かったんだよ!
こっから逃げ出さないようにな!」

軍団員マリオ
「逃げ出さ…ないように??」

ジムチョー
「あーあー!やっぱりその事も忘れていたか!
嘆かわしい!いかがわしい!組織の恥らしい!」

軍団員マリオ
「(どういう事だ?さっきの2人が言ってた罰が関係しているのか?
ま、まあ良いや…とりあえずここは、話を合わせておこう……)
あぁ、そうでした。その為に預けていたんでした!すっかり忘れていました。すみません…」

ジムチョー
「ホントかあ?」

軍団員マリオ
「は、はいぃ…!」

軍団員ルイージ
「本当です本当です!」

軍団員イリア
「これからは、しっかり覚えておくよう気を付けます」

ジムチョー
「…そうか……じゃあ、さっさと仕事に…」

軍団員マリオ
「あぁー!そうは行かないんですよお!!」


仕事に戻れと言おうとしたジムチョーの言葉を、マリオは必死にさえぎる。
これにジムチョーは、面倒そうにしつつ、「今度は何だ?」と言う。
それを聞いたマリオらは、こう言った。


軍団員マリオ
「実は、バツガルフ様にお話ししたい事が出来てしまいまして…
それで下の階に行きたいんです、はい…」

軍団員イリア
「なので、エレベーターキーをお返し頂きたいと思い、参りました」

ジムチョー
「何だそんな事か…ダメだ!」

軍団員イリア
「え…?」


あまりにも即座に答え過ぎた為か、イリアは耳を疑った。
それを見たジムチョーは、めんどくさそうなものを見るような様子で、また口を開く。


ジムチョー
「聞こえなかったか?ダメだ、と」

軍団員イリア
「何故ですか?」

軍団員マリオ
「そうですよ!俺達、本当にバツガルフ様に用事が…」

ジムチョー
「何という事だ!お前らは、自分が何をしたのかすら忘れたのか?」

軍団員マリオ
「え?何って…あ、ひょっとして、罰でここにいる事…ですか?」

ジムチョー 「何だ覚えてるじゃないか!そうだよ…お前ら先週、転送装置の警備を買って出ただろう?」

軍団員マリオ
「は、はい…買って出ましたが…」

ジムチョー
「それで実際に警備に当たらせてみたら、
お前ら装置を無断使用して、ゴロツキタウンの遊技場に遊びふけっていたと言うではないか!
全く、何を考えているんだ!」

軍団員マリオ
「あ、あぁ…そんな事ありましたね…(コイツらそんな事やってたのかよ!)」

軍団員ルイージ
「(いくらなんでもやる気なさすぎだよ…)」

軍団員イリア
「(だから、こんなにキツく当たられているのか。これは困ったな…)」


トリオの所業に呆れるマリオ兄弟、悩むイリア。一方、ジムチョーはマリオの反応に怒鳴るようにこう返す。


ジムチョー
「そんな事もありましたね、じゃない!
お前らそんな上手い事言って、結局はあの装置を使いに行きたいだけ何だろう?
そんな連中にエレベーターキーなど渡せるか!」

軍団員マリオ
「いえ、今回ばかりはホントの事でして…」

ジムチョー
「そう言う奴ほど嘘を言ってるものだ。お前らのようなバカどもは、エリート軍団員と私だけで事足りる、
アジト1暇なこのフロアでグダグダやってる方がお似合いだ!」

軍団員マリオ
「だから、ホントなんですって!」

ジムチョー
「ほぉ…じゃあ、どんな用があるのか言ってみろ!」

軍団員マリオ
「え?そ、それは、その…」

ジムチョー
「ほら、何も言えないじゃないか!
理由も話せない奴の言う事を易々と信じるほど、私は甘くないんだ!
だからさっさと仕事に戻れ、ボケどもが!」 軍団員マリオ
「…どうしても信じてくれませんか?」

ジムチョー
「同じことを何度も言わせるな!」

軍団員マリオ
「ホントのホントに信じてくれませんか?」

ジムチョー
「ホントのホントのホントに信じられん!」

軍団員マリオ
「そうですか…なら!」


と、マリオはジムチョーに近付くと、彼の体に片手をかざした。


軍団員ルイージ
「兄さん…?」

ジムチョー
「? 何だその手h…グハ――!?


ボオ――ン!!!

そして、ジムチョーが言い終わる前に、マリオはファイアハンドを炸裂させ、ジムチョーを吹っ飛ばす。
吹っ飛んだジムチョーは、真っ黒焦げになって床に叩き付けられた。


ジムチョー(真っ黒焦げ)
「がぁ…!な、何故ぇ…!?」

軍団員マリオ
「さっさとエレベーターキー渡してくれない、アンタが悪いんですよっと!」


ゴッ!

そう言ってマリオは、ジムチョーの頭をぶん殴った。


ジムチョー(真っ黒焦げ)
愛ビヴァック


するとジムチョーは、変な悲鳴を上げて気絶。それを確認してマリオは、彼の服の中を漁り尽す。


軍団員マリオ
「服の中には無い。この部屋の何処かにしまい込んでるのか?」

軍団員ルイージ
「ちょ、ちょっと兄さん!何やってんのさ!?」

軍団員マリオ
「何って?」

軍団員ルイージ
「僕らの目的は、バツガルフの説得だよ?なのに、こんな事して…!」

軍団員マリオ
「しょうがないだろ!何言っても渡してくれ無さそうな空気だったんだし…」

軍団員ルイージ
「けど、最初に穏便に行こうって言ったのは、兄さんだよ?これじゃあ本末転倒だよ!」


兄の行動を批判するルイージ。その時、事務室の外から、先程のエリート軍団員2人の声が聞こえてくる。


エリート軍団員Aの声
『何だ?今の爆発音は!?』

エリート軍団員Bの声
『ジムチョーの悲鳴も聞こえたぞ。事務室で何かあったに違いない!』

エリート軍団員Aの声
『よし、急行だ!』


軍団員ルイージ
「あぁ、マズいよ!このままだとアイツらが来て、説得どころの騒ぎじゃなくなっちゃう!」

軍団員マリオ
「そうは言われても…」

軍団員イリア
「…いや、この騒動。バツガルフに近付くのに、利用できるかもしれない」

軍団員マリオ兄弟
「「え…?」」


イリアの言葉に、首を傾げるマリオ兄弟。

それから、数分も経たないうちに、エリート軍団員2人が事務室に入ってきた。


エリート軍団員A
「な、何だこれは!?」


黒焦げで気絶したジムチョーの姿に、驚きの声を上げるエリート軍団員A。
そして、その側では何故かマリオ兄弟が腰を抜かして震え、
イリアはジムチョーの姿を見つめたまま立ち尽くしている。

それに気付いたエリート軍団員Bが、彼女に声を掛ける。


エリート軍団員B
「おいそこのダメ新人!一体何があった!」

軍団員イリア
「そ、それが…廊下の警備に戻った後、事務室の方に変な3人組が入っていくのが見えて…」

エリート軍団員B
「まさか、その変な3人組がやったというのか!?」

軍団員イリア
「はい…決定的な瞬間まで見てはいませんが、間違いないかと…」

エリート軍団員B
「何だと?ちゃんと見張っとかんかバカが!」

エリート軍団員A
「無茶言うなよ。コイツらがここにいるのは、あくまで罰なんだから…」

エリート軍団員B
「お前、何で急にコイツらの肩もつんだよ!?」

エリート軍団員A
「本当の事言っただけなんだけど…」

エリート軍団員2人がそのようなやり取りをする中、イリアが「あの…良いですか?」と声を掛ける。


エリート軍団員A
「なんだ?」

軍団員イリア
「実は私達、その犯人の姿や会話を、見聞きしたんです」

エリート軍団員A
「それは本当か!?」

軍団員イリア
「はい」 エリート軍団員A
「一体どんな奴だった?何と言っていた?」

軍団員イリア 「犯人達は確か、影みたいな姿で、バツガルフ様を困らせようとか何とか…」

エリート軍団員A
「影みたいな姿で、バツガルフ様を困らせよう…まさか、カゲ三人組か!?」

エリート軍団員B
「そんなバカな!」

エリート軍団員A
「しかし、奴らは過去にバツガルフ様を自分達の目的に利用していた。
今回も、何かよからぬ事を企んでいるに違いない!
それに、奴らならば、誰にも気付かれずにこのアジトに侵入できる」

エリート軍団員B
「信用できないな…現にさっきもコイツら、ツキノシンエモン対策が万全である事を忘れていたし」

軍団員イリア
「確かに、記憶が混乱しているかもしれません。
けど、バツガルフ様にそのカゲ三人組とやらのデータを見せれもらえれば、
この記憶が正確かどうか、判断できると思います」

軍団員マリオ
「あ、あぁ…そうだ!画像でも何でも良いから、
バツガルフ様にそいつらのデータを見せてもらうよう、取り計らって下さい!」

軍団員ルイージ
「僕…いや、お、オレからもお願いします…!」


イリアの言葉に、マリオ兄弟は頭を下げて頼み込んだ。
これに2人のエリート軍団員は顔を見合わせる。


エリート軍団員B
「どうする?」

エリート軍団員A
「どうするもこうするも、犯人の姿を見たのはコイツらだけだ。見せてもらうしかないだろ…」

エリート軍団員B
「しょうがないか…」


話し合った末、2人は彼らの要望を聞き入れる事を決定。
そして、彼らに顔を向ける。


エリート軍団員B
「分かった。私の方からバツガルフ様に言っておく。だから、着いて来い」

軍団員イリア
「ありがとうございます!さ、お前達、立て!」

軍団員マリオ兄弟
「「はいぃ…!」」


イリアに言われ、マリオ兄弟は立ち上がると、彼女と共にエリート軍団員Bの後ろに着く。


エリート軍団員B
「はぐれるんじゃないぞ?バカ新人ども!」


乱暴に言いながら、エリート軍団員Bは彼らを連れてその場から歩き出すと、
まずは廊下へ出てキーを使ってエレベーターを起動。3人と一緒に乗り込むと、
地下2階廊下まで降り、その廊下の一番右の突き当りにある『総統の間』に足を運ぶ。
しかし、行ってみれば、その部屋にバツガルフはいなかった。


軍団員イリア
「あの、姿が見えませんが…」

エリート軍団員B
「見りゃ分かる、ダメ新人が!今探してくるから、ここで待ってろ!
勝手に色々触ったり、バツガルフ様の私室に入ったりするなよ?」


またしても乱暴に言いながら、エリート軍団員Bは総統の間から出ていくのだった。
それを確認して、3人は頭巾と眼鏡の下でニッと笑みを浮かべ、お互いの顔を見合わせる。


軍団員ルイージ
「上手くいったね」

軍団員マリオ
「あぁ。騒動を逆利用して、バツガルフを俺達の元に引っ張り出す…
まさか、あの短時間でこんな作戦を考えてしまうなんて、恐れ入ったよ…」

軍団員イリア
「戦場では臨機応変な対応が大事だからな。そして、今ので1つ学んだ事がある」

軍団員マリオ
「なんだ?」

軍団員イリア
「ご先祖様は、少し短絡的な一面がある…と言う事を」

軍団員マリオ
「…………」

軍団員ルイージ
「クスり…」





午前11時38分―――

マリオ達の作戦にハマったとも知らないエリート軍団員Bは、バツガルフを探しに廊下を歩いていた。
途中、見慣れぬ回路を持ったペケダーと出くわした。


エリート軍団員B
「あ、ペケダー様!」

ペケダー
「お前は…こんな所で何やっとるんだ?入口の見張りはどうした?」

エリート軍団員B
「それが…」


エリート軍団員Bは、ペケダーに事の経緯を説明した。


ペケダー
「何だと!?そんな事が…!」

エリート軍団員B
「えぇ。それでバツガルフ様を探していたのですが…」

ペケダー
「丁度良い。今ワシは、テックIIの頭脳回路を、
コンピュータールームに届けに行こうとしていたところだ。
恐らくバツガルフ様も、そこにいるだろう。ワシがお前に代わって、バツガルフ様に知らせておいてやろう」

エリート軍団員B
「ありがとうございます!では、持ち場に戻らせてもらいます…!」

ペケダー
「気を付けろよ!」


そう言ってペケダーは、1階に戻るエリート軍団員Bを見送った。


ペケダー
「さ、ワシも急がねば…」


と、ペケダーも別のエレベーターに乗り込むと、
一番下の地下4階まで降り、フロア右端のコンピュータールームに足を運ぶ。
コンピュータールームには従来のテックがいたのだが、
そちらは電源が切られているのか、画面や周囲の電飾に光が灯っていない。
しかし、ペケダーの目当てはそちらではなく、電源の切られたテックの向かい側…

そちら側には、テックに酷似したコンピューターが新たに増設されており、
その前にバツガルフと数名の研究員が集まっていた。
これが、テックIIなのだろう。


ペケダー
「ゲヘ!バツガルフ様、やはりこちらにいやしましたか!」

バツガルフ
「ペケダー。頭脳回路が完成したのか?」

ペケダー
「ヘイ!この通り…」


ペケダーは、完成した頭脳回路をバツガルフに見せ、バツガルフもそれが注文の品である事を確認する。


バツガルフ
「では、早速組み込むのだ」

ペケダー
「ゲヘ!仰せのままに…!」


ガチャガチャガチャ!

バツガルフに言われるがまま、ペケダーはテックIIに頭脳回路を組み込んだ。


ペケダー
「これでよし…お前、起動しろ!」

研究員A
「ハッ!」


ピ! ブイィィィ―――....! ペケダーはテックIIの起動を研究員の1人に命じると、彼は命令通りにテックIIの電源を入れる。
すると、テックIIは音を立てながら、電飾や画面、そしてメインカメラに光が灯っていく。

同時に、その意思も覚醒を始める…


テックII
「ピ…ピピピ……ココハ…ドコ?ワタシハ、ダレ……?」


目覚めたばかりで、ここが何処なのか、自分が誰なのか分からないらしい。
なのでテックIIは、周囲を見回すと、目の前で自分達を見るバツガルフ達の姿を確認する。


テックII
「アナタタチハ…ダレ……?」

研究員A
「我々の姿を確認し、質問出来ている」

研究員B
「どうやら、正常に動いているようです」

バツガルフ
「フム、起動は成功のようだな。お前達良くやった。
これで、我が理想の実現に近付く事が出来る…」

テックII
「リソウ…?ジツゲン…?ソレハ、ナニ…?」

ペケダー
「それはな、パーフェクトな世界を作る事だ。その為に、お前は生まれたんだ」

テックII
「パーフェクトナセカイ…?ツクルタメ…?ワカラナイ……
ソレニ、ワタシハ…ダレ……?」

バツガルフ
「お前の名は、TEC-XX Mk.II。
TEC-XXに代わって我らメガバッテンを支えるスーパーコンピューターとして、我々が作ったのだ」

テックII
「テック・バツバツ…マーク・ツー……ソレガ、ワタシ………
ケド、ソシキ…メガバッテン……ワカラナイ………」

バツガルフ
「安心しろ。これからそれについて、お前は学ぶ事になる。我が理想の為にな…」

テックII
「…ワカリマシタ……エット………」

バツガルフ
「私はバツガルフ。メガバッテンの総統だ。そして、ここにいるのはペケダーと研究員だ」

ペケダー
「よろしくな!」

テックII
「バツガルフ…ペケダー……ケンキュウイン………ワカリマシタ…………」


テックIIの返事を聞き、バツガルフは首を縦に振った後、ペケダーに話しかける。


バツガルフ
「改めて良くやったと言ってやろう。注文通り、女の人格で組んでくれたようだしな」

ペケダー
「前のテックは、男の人格だったから、ああなりやしたからね。
今回は、バツガルフ様に特別な感情を抱きやすくするよう、心掛けて作りました。
それはそうと、バツガルフ様の耳に入れておきたい事が…」

バツガルフ
「何だ?」


ペケダーは、エリート軍団員Bからの伝言をバツガルフに伝えた。


バツガルフ
「何!?それは本当なのか?」

ペケダー
「本当かどうか分からないから、カゲ三人組のデータを見せて欲しいと…」

バツガルフ
「フム…使えぬ新人どもの為に出向いてやると言うのはシャクだが、
目撃者が奴らだけで、私を困らせようとしている輩がいるかもしれないとなれば、話しは別だ。
お前達、私は少し離れるからそれまでの間、テックIIを見張っておけ」

ペケダー
「ハッ!お任せください」

研究員A
「行ってらっしゃいませ、バツガルフ様!」


ペケダーらの返事を聞くと、
バツガルフはコンピュータールームを離れ、エレベーターに乗って地下2階へと向かうのだった。





―総統の間―


軍団員マリオ
「ズルズル……それにしても、ズルズル……
これが終わったら、ビビアンに謝っとかないとな…ズルル……」

軍団員イリア
「何をだ?」

軍団員マリオ
「ズルルルル…一時の嘘とは言え、ジムチョー襲った犯人にしちゃったこと……ズルズルル〜……」

軍団員イリア
「なるほど確かに…」

軍団員ルイージ
「て言うか、兄さんさっきから何ズルズル言ってるの?」

軍団員マリオ
「ズルズル…服の臭いのせいで、鼻のムズムズが酷くなってきてな……
ズルズル………」

軍団員ルイージ
「確かに臭いけど、僕らは何ともないよ?」

軍団員イリア
「どうやら、彼の服が取り分け臭いらしいな」

軍団員マリオ
「みたいだ…ズルズル……それより、バツガルフの奴まだ来ないのか?ズルズル……」

軍団員ルイージ
「そう言えば、遅いね」

軍団員イリア
「…………」


カチカチ…

バツガルフが来るのが遅いのを感じたイリアは、
ウォッチデバイスを開くと、現在の時刻を呼び出してみる。すると、画面にAM・11:48と表示された。


軍団員イリア
「午前11時48分…と言う事は、テックIIが完成する頃だな」

軍団員マリオ
「ズルル…それじゃあ、バツガルフが来るのが遅れてるのは…ズル〜…
テックIIのところにいるからか…ズルズルズル……」

軍団員ルイージ
「ホントに大丈夫なの?」

軍団員イリア
「大丈夫。今からバツガルフを不在に出来れば、彼らもテックIIにヘタな教育は出来ないはずだ」


ウィーン!

と、イリアが言ったその時だった。部屋の扉が開く。


軍団員イリア
「! 来たようだ」


バツガルフの到着だと察し、3人はその場で気を付けの姿勢をとる。
そして、彼らが察した通り、扉の向こうからバツガルフが現れた。


バツガルフ
「待たせたな、使えぬ新人どもよ」

軍団員イリア
「待ったなんて、とんでもありません!」

軍団員マリオ
「ズルズル……(て言うか、バツガルフにすら使えないと言われるなんて、
どんだけ問題児なんだ、この新人どもは?)」


と、心の中で新人軍団員トリオに突っ込むマリオ。
一方、バツガルフは背後の扉が自動で閉じる中、
彼らに近付いてジムチョーを襲った犯人についての話題を振る。


バツガルフ
「それで、お前達はカゲ三人組の姿を確認したいのだな?」

軍団員イリア
「はい。その為にデータを見せて欲しいのです」

バツガルフ
「分かった。着いて来い」

軍団員マリオ達
『ハッ…!』


バツガルフの言葉に、マリオらは返事と共に頭を下げる。
それを確認すると、バツガルフは彼らを自分の私室へと連れていく。

ところが…


バツガルフ
「な…!?」


私室に入った途端、背後からイリアに杖を持つ腕を掴まれた上で羽交い絞めにされ、
身動きも魔法を使う事も出来なくされたのだ。


バツガルフ
「き、貴様…!いきなり何を…!?」

軍団員イリア
「静かに!大人しくしていれば、手荒な真似はしない…」

バツガルフ
「その声…貴様、本物の新人ではないな!?」

軍団員イリア
「騙すようなマネをして、申し訳ない…
けれど、あなたに近付くには、こうするしかなかった…」

バツガルフ
「と言う事は、ジムチョーを襲ったのは、貴様か!」

軍団員イリア
「いいや、私ではないし、襲うつもりもなかった。ただ、何処かの誰かさんが、短絡的な行動に走ってな…」


そう言いながらイリアは、マリオに冷たい視線を送る。
当然ながら、これにマリオは冷や汗を垂らすはずだったのだが、当の本人はそのような素振りを見せなかった。
何故なら、今彼はそれどころではない状況に直面していたのだ。


軍団員マリオ
「ん……んんん……(や、ヤバい…クシャミ出そう……けど、今は我慢我慢……)」


新人軍団員の服のあまりの臭さに、クシャミが出そうで堪えていたのだ。
一方、バツガルフはある疑問をイリアに投げかける。


バツガルフ
「目的は何だ?私を人質に取って、組織を乗っ取ろうと言うのか?」

軍団員イリア
「いいえ…アナタには、600年後の未来に来てほしい…
何故なら、その未来にアナタが作った、テックIIが深く関わっているから…」

バツガルフ
「!? 貴様、何故テックIIの事を…!それに、未来に深く関わっているとは…?」

軍団員イリア
「今に分かる…ッ!」


カランカラーン!

そう言ってイリアは、懐からタイムボールを取り出すと、それをバツガルフの目の前に放り投げる。
すると、タイムボールは真っ二つに開くと、その中から光が放たれ、
赤と黄色のツートンカラーの渦を巻く丸い穴が空中に投影されるかのようにパッと出現した。


バツガルフ
「な、何だこれは!?」

軍団員イリア
「これは、あらゆる時代を繋ぐタイムホール…
この先には、600年後の未来の世界がある。そこでアナタには…」

軍団員マリオ
「ん…んん……んぐぐ……んぶぶ……」


イリアがバツガルフに説明している後ろで、マリオは必死にクシャミを堪えている。
だが、服の臭いが、我慢の気力を確実に削いでいっていた。

そして…




軍団員マリオ
「んぶ…っぶ……!ブワアァークショぉ―――ン!!!!!


ドッ…!

ついに、マリオの我慢は限界を突破し、大きなクシャミをしてしまう。
しかもその拍子に前方にバランスを崩し、イリアを突き飛ばしてしまった。


軍団員イリア
「…!?」

バツガルフ
「ぬぅ…!?」


イリアが突き飛ばされた事により、
羽交い絞めにされていたバツガルフも連鎖的に押し出された。


バツガルフ
うわああぁぁぁ......!!!


シューン…

そして運が悪い事に、その先にタイムホールがあり、
押し出されたバツガルフが、中に吸い込まれてしまった。


軍団員イリア
「し、しまった!バツガルフが…!」

軍団員マリオ
「うぅ…あ!ヤベ…!」

軍団員ルイージ
「兄さん、また何やってるの!?」

軍団員マリオ
「しょうがないだろ!この服、とんでもなく臭くて…」

軍団員イリア
「そんな事より、早く追い掛けないと!
飛ばされた先に機械帝国の兵士がいたら、大変だ!」

軍団員ルイージ
「そうだね!…あれ?」

軍団員イリア
「どうした?」

軍団員ルイージ
「ねえ、タイムボールの様子がおかしいよ?」


ザ…ザザザー……

ルイージの言う通りであった。
タイムボールは上の方から分解されるかのように消え始めており、
それに伴ってタイムホールも不安定になり、消えかかっている。


軍団員マリオ
「ホントだ。一体どうしたんだ?」

軍団員イリア
「いけない!さっきも言ったが、コイツは未来へ帰還する為の使い捨て…
一度使用すると分子崩壊して消滅するよう出来ているんだ!」

軍団員ルイージ
「何だって!?」

軍団員マリオ
「じゃあ、さっさと入らないとな!行くぞ!」

軍団員イリア
「アナタのせいでこうなったんでしょうが…」

軍団員ルイージ
「ま、待ってよー!」


マリオ達はバツガルフを追い掛けてタイムホールへ突入。
それから少しすると、タイムボールはイリアの言う通り自壊して消滅し、タイムホールもフッと消える。
こうして、バツガルフの私室には、バツガルフのペットのガジガジ以外、誰もいなくなった…

果たして、600年後の未来には、何が待っているのだろうか…?



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