「はい、持ってきたわよ」
「あんがとさん」
部屋の置くから2人のお茶を持ってきて、それをテーブルに置く霊夢。
覚りの少女は、軽く礼を言うと出されたお茶を飲み干した。
「ん〜…いい味ね…あ、今嬉しいって思ったでしょ?」
霊夢の心を読む覚りの少女。彼女の言葉に霊夢は、自分のお茶を飲みながら無言で首を縦に振る。
「フムフム。それで、そろそろ私の事を話してくれないかって思ってるでしょ?」
続けて霊夢の心を読む少女。これにまたしても霊夢は無言で頷く。
「じゃあ、お答えに上がりましょう。私は"古石さと見"。二十歳で〜す☆」
急に立ち上がり、左手を腰に、Vサインを作った右手を右目の前に当て、そして上半身を左に傾けながら名乗り、
最後にウィンクをしての決めポーズを取りながら自己紹介をする少女。
なんとも突っ込みどころ満載な言動と動きに、霊夢は反応に困った。
「はいはい!反応に困らない困らない!」
すぐさま霊夢の思考を読み取るさと見。
そんな彼女に、霊夢は「困って悪かったわね」と言いたげな眼差しを送った。
これにさと見ははあっと溜め息を吐くも、すぐに気を取り直すように話しを再開する。
「まあ良いわ。それで、反応に困っていると同時に、私が何処から来た覚り妖怪なのか知りたい、そう考えているでしょ?」
霊夢の心をまた読むさと見。それを言われ、霊夢はまた無言で頷く。
そして、その反応を見たさと見は、語り始める。
「そうねえ…簡単に言えば、私は一度外の世界に出てった幻想郷の妖怪なのよ」
さと見の言葉に驚いてか目を丸くする霊夢。そして、さと見はそんな霊夢の思考を読みとる。
「驚いた?実はね、覚り妖怪の幾つかはこれ以上いても嫌われ続けるだけで、いても無駄と判断して幻想郷から出て行ったのがいるのよ。
私はその内の1人だったって訳」
さと見の説明に、霊夢は納得してか軽くうなづいたが、同時にある疑問が生まれる。
無論、さと見はそれを見逃さない。
「あ?今一度幻想郷から出て行った妖怪が、何で戻って来たかって思ったでしょ?」
さと見に言われ、霊夢は無言で首を縦に振った。
「答えは簡単よ。外の世界にいるのが嫌になったのよ。なーんか、人間の世界では今政治家が退陣がどうのこうのだの、
そのせいで地震かなんかの対応が遅れるか何だのの事ばっかだし、外の世界の妖怪達と隠れ住むのも飽きて来たし…
だから、幻想郷に帰りたくなっちゃってね。
それで、気配消すなり姿消すなり何なりして、外の世界に住む人間とか隠れ住んでる妖怪とかに何とかして私の事を忘れさせて、ここに帰って来たって訳。
ま、いわゆる幻想入りならぬ幻想帰りして来たって所かしら?」
さと見の言葉にまた納得の表情を見せる霊夢。だが、同時にまたある疑問が浮かぶ。
「え?"それは良いけど、ここへ帰って来て大丈夫なのか"って?それはどう言う…
ああ、私を嫌ってる人達がいるここに帰って来て大丈夫なのかって事ね?
つーか、ここではまだ覚り妖怪は嫌われているの?」
さと見の質問に、霊夢は無言で頷いた。
「あぁそう…
そりゃちょっと残念ね。でも、外の世界の人事に絶対に触れないようにするには、
外の世界と完全に隔絶されてるこの幻想郷に帰る以外、手は無かったし…だから、どう嫌われようが、ここからは出ないつもりよ」
さと見の答えに、霊夢は相変わらず無言で頷いた。
「よし!それじゃあ、今度はアンタについて聞きましょうか?」
と、今度はさと見が霊夢に質問をする。
だが、霊夢はと言うと、首を縦に振るだけでやはり口では何も答えない。
そんな彼女の心を、さと見はまた読みとる。
「フム…"私は博麗霊夢。この博麗の巫女よ。"
ああ、やっぱり!博麗の神社の前にいるから、そうだとは思ってたわよ。はぁ〜…よかった〜…」
何故かほっと胸を撫で下ろすさと見に、霊夢は「どう言う意味よ?」と言いたげな眼差しを送る。
「…え?どう言う意味かって?いやね、私は先代の博麗の巫女がいた頃に幻想郷に住んでたんだけどさあ、
そのアンタの先代はそれはもう、胸デカでキツそーなおっかない姐さんで、近付き難いイメージあったのよ。
だから、アンタみたいなペチャパイで誰とでも仲良く出来そうな、かわい〜い娘さんが博麗の巫女になっててよかったな〜って思ったのよ」
さと見のその言葉に、霊夢は納得すると同時に、「胸の大きさは関係あるのか?」とも思った。
「え?"胸の大きさは何か関係あるのか"って?いや別に、私なりの基準があるのよ、基準が」
霊夢の思考を読み、そのような言い分を返すさと見。
どう言う基準があるのか、霊夢には分かりかねる所があったが、あえてこれ以上は考えない事にした。
「考えるのを止めるとは、良い選択ね。まあ、それはそうとさあ。アンタ、知り合いに覚り妖怪いるでしょ?」
と、いきなりさと見に言われた霊夢は少し驚くものの、冷静に無言で頷く。
「やっぱりね。この第三の目を見て一発で私が覚りだって気付いたんだもの。
そのうえ、覚りが嫌われ者である事も知っているばかりか、さっきからあえて無言でいて私に心を読ませて会話している…
覚りに会った事のある人じゃなきゃ、こんな事出来っこないわ」
ズバリ言い当てるさと見に、霊夢は見事だと言わんばかりの顔をした。
「凄いでしょ?覚りの力は伊達じゃないわ。…で、霊夢。アンタの知り合いの覚り妖怪ってどんなんなの?」
と、新たな質問を掛けるさと見。これに霊夢は、無言で答える。
「フムフム…え!?さとりとこいしだって!?霊夢、本当に…あの2人のようね」
古明地姉妹の名前に反応するさと見に、霊夢はそうだと言わんばかりに首を縦に振った後、
無言であの2人を知っているのかと聞く。
「当然よ。私は、小さかった頃のあの2人に覚り妖怪の基本技教えたり何なりして遊んでやった、ダチ公兼師匠だったんだから。
は〜、よかったぁ…生きてたんだ〜…」
余程姉妹の事を心配していたのか、さと見は安堵の表情を浮かべると、また次の質問に移る。
「それで霊夢、あの2人は今何処にいるの?」
さと見の言葉に、霊夢は無言で古明地姉妹は幻想郷の地下にある旧都の奥の灼熱地獄跡の管理をする為、
地霊殿と言う屋敷に住んでいる事を話す。
「旧都?灼熱地獄跡?地霊殿?私がいない間に、そんなトコが出来てたの?」
初耳と言わんばかりのさと見に、霊夢は無言で「知らないの?」と言った。
「当たり前でしょ!長年幻想郷から離れてたんだから」
そう答えるさと見に、霊夢は今度は「じゃあ、スペルカードルールとかも知らないの?」と無言で聞いた。
「スペルカードルール?何それ?」
スペルカードルールも知らない様子のさと見に、霊夢は「やっぱり…」と言った表情を浮かべた後、
無言でスペルカードによる決闘についての説明をした。
「な、なるほど…決められた枚数のカード使って、
弾幕張って相手の技破ったり耐えたり、そんでもって美しさを見せたりする、はっでーな女の子の遊びって訳ね」
さと見の言葉に、その通りと言わんばかりの表情で、霊夢は首を縦に振った。
「そんな遊びが出来てたなんて…
でも、ルールは分かったけど、実際に見ないとどんな風なものなのかちょっと分からないわ…」
まだ弾幕ごっこの具体的な様子が分からないさと見に、霊夢は「だったら、今から私と練習する?」と無言で持ちかけるが、
さと見は、「いや、そこら辺にいる住人がやってるのを見て自分で勉強する」と返した。
これに霊夢は「大丈夫なの?」と無言で言った。
「大丈夫よ。多分…」
何処か自信なさげに答えるさと見に、霊夢はますます不安になった。
「そ、そんなに不安がらないでよ。私は二十歳の大人よ?大丈夫大丈夫!」
そう言って元気なポーズを取るさと見だが、霊夢にはそれが強がっているようにしか見えなかった。
だが、恐らく言うだけ無駄だろうと判断し、霊夢はそう言う事にする事にし、次に彼女にこれからどうするのか無言で聞く。
「…え?"アンタ、今からどうするの?地霊殿に行くの?"
う〜ん…本当ならそうしたいけど、出来るなら今の幻想郷がどうなってるのかも見てから行きたいわね」
そう答えるさと見。それを聞いた霊夢は、最初に紅魔館に言ってみる事を勧めた。
「こうま…かん?何処そこ?」
さと見の質問に、霊夢はさとりの親友の吸血鬼の貴族レミリア・スカーレットが住まう館である事を説明した。
「へえ!吸血鬼の貴族で、しかもさとりの親友が住んでるんだ!うへへへぇ〜…さとりの奴良いなァ〜…」
と、さと見は急に怪しげな笑いとデレ〜とした表情を浮かべる。
その様子に、霊夢は「急にどうしたの?!」と言いたげな表情を浮かべる。
「いや〜…こっちの事よ、気にしないで。それで、紅魔館に行くには…
ああ、この神社の先にある魔法の森を抜けた先の霧の湖に行けば良いのね?」
霊夢の心から紅魔館への行き方を読み取るさと見。これに霊夢は、無言で頷く。
「分かったわ。じゃあ、ここいら辺りで失礼させてもらうわ。色々とありがとね」
霊夢にお礼を言うさと見。
これに霊夢は無言で「どういたしまして」と返す。
それから、さと見は紅魔館を目指すべく、博麗神社を後にした。
「…行った様ね。全く、ちょっとおかしなのが来ちゃったわね。
それにしてもあの妖怪、左目が凄い事になってたわね。いったい、何処であんな傷を負ったのかしら?ついでに聞いとけばよかったわね」
そう言いながら、霊夢はいつの間にか飲み干した自分のお茶が入っていた湯のみと、さと見の湯のみを持って台所へと足を運んだ。
突如、幻想郷に帰って来た覚り妖怪、古石さと見。
彼女はこれから、この幻想郷で何を巻き起こすのか?
さと見の幻想郷を巡る冒険が、今始まった!
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