所変わって、地霊殿の浴場。
この時間帯は誰も風呂に入っていない為、本来は静かなはずであった。
しかし、ここからはサァーっとシャワーの音が聞こえる。

それもそのはず、今ここでは地霊殿の主、
古明地さとりが1人シャワーを浴びていた。

言うまでも無いが、服の一切は身に着けていない。
だが、幸いにも彼女は壁や湯気で曇りきった鏡側に立っており、
正面からは背中と形が良い桃尻だけしか見えなかった。

彼女は今、何かを考えていた。
そして、考えた後、何処か切り替える様な様子で口を開く。


「…とりあえず、次のことを考えましょう。
…そうね、最近面白い本を買ったから、それを読みましょうか?
いや、この前面白い話を考えたから、それを書いて見ましょうかしら…
あら?」





次の予定を考えるさとりだったが、
脱衣所に置かれた第三の目に話しかけてくる、
誰かの心の声に気付き、さとりはその心の声の主に話しかける。


「もう帰って来たの?"蛇丸"」


蛇丸の名を呼ぶさとり。
どうやら、彼女のペットの1人である蛇丸が、
彼女に用事があって脱衣場に来たようである。

だが、脱衣場の第三の目の前には、
先程さと見が旧都で見掛けたニシキヘビしかいない―――
否、このニシキヘビこそ、蛇丸自身。
ペットとしての彼の本来の姿だ。
さと見が旧都で見たニシキヘビの正体は、蛇丸だったのだ。

ドア越しのさとりの声を聞き、蛇の姿で喋れない状態の彼は、心の声でこう答えた。


「(すまないさとり。
"あの店"に行く予定だったんだが、気になる奴を見掛けてしまって…)」

「気になる奴?いったい誰?」

「(覚り妖怪で、しかも昔見た顔の奴だ。
今こっちに向かっている)」

「覚り妖怪?おかしいわね、
今の幻想郷には私とこいし以外の覚り妖怪はほとんどいないはず…
それに、こっちに向かっていると言うのは本当なの?」

「(信じられないかもしれないが、
どう見ても覚り妖怪だった。
そして、最初に見つけた広場で勇儀達に道を聞いていたから、こっちに向かっているのは間違いない。
ただ妙な事にその後忽然と姿を消してしまったんだ。
まるでこいしみたいに…)」

「…確かに気になるわね」

「(だろう?だから、その妖怪と会ってくれるか?)」

「ええ、そうするわ。
丁度シャワーも終わった所だし、とりあえずエントランスに行くとするわ」

「(分かった。
彼女との約束の時間に遅れるが、俺も気になるから、一緒に会おうと思う。
良いか?)」

「貴方がそうしたいのなら、そうしなさい。
ただし、女の子は余り待たせちゃダメよ」

「(分かってるって…それじゃあ、先にエントランスに行ってるからな)」


心の声でそう伝えると、蛇丸は脱衣所から出て行った。


「はぁ…
さっきペットの相手をして来たばかりなのに、今度は来訪者…
今日は疲れるわね。
でも、昔見た顔の覚り妖怪って…いったい誰なのかしら?」


蛇丸の言う覚り妖怪の正体が気になりつつ、
さとりはシャワーを浴び終え、黒い何かを持って浴場から出る準備を始める。

だが、この時の彼女は、その"昔見た顔の覚り妖怪"がかつての友、
さと見であろうとは夢にも思っていないのは、
言うまでも無い―――





一方、そのさと見はと言うと、既に地霊殿の前にまで到着していた。


「へえ、立派なお屋敷ね。
しかも本当に旧地獄のど真ん中に建ってらぁ…」


目の前で堂々と立ち尽くす地霊殿の姿に、さと見は感心する。


「さて、それじゃあ入るとしましょうか」


それから中に入ろうと玄関に進むさと見だったが、

だが―――




「オイ!」

「ソコノ怪シイ奴、待テ」

「ん?」


そこで、奇妙な者達が立ちはだかった。
それは、青いセキセイインコと黄色いセキセイインコらしき、
2羽のインコであった。


「な、何よアンタら?」

「俺達カ?俺達ハ…」

「コノ地霊殿ノ門番ダ」

「門番?」


門番と名乗るインコだったが、さと見は信じられないような顔をする。


「ナ、ナンダソノ顔ハ!?」

「俺達ガ言ッテル事ガ信用デキンノカ!?」

「うん、全然」


さらっと答えるさと見。
それもそのはず、
彼女は見栄を張っている彼らの心が見えているからだ。

だが、インコ2羽はそれに気付いていないのか、
ムキになった様子でこう言った。


「ナ、ナンダト〜!テメーばかニシヤガッテ!オイ、オ前!」

「ナンダ?」

「包丁持ッテコイ!」

「ハア?オ前何言ッテンダ?んナもん出シタラ犯罪ダゼ?」

「ナンデ包丁出シタダケデ犯罪ニナルンダヨ!
出スダケデ犯罪ニナルンナラ、
マナ板デ野菜果物切ッタリ、洗ウ為ニ包丁出ス主婦モ、
皆犯罪者ニナッテきりガ無クナルゾ!」

「ばか、分カランノカ!?
近頃、ドレダケ包丁ヲ凶器ニ使ッタ殺人事件ガ起コッテイルト思ッテイルンダ!?
包丁ガ凶器トシテ常用サレテイルト言ウ事実ガアル時点デ、
包丁ヲ持ツ事自体犯罪ニ手ヲ染メルト言ウ事ナノダ!」

「ソノ理屈ハオカシイ。
ダイタイソレヲ言ッタラダナア、さとり様モ…」


ここで、突然包丁を持つ事自体が犯罪になるかどうか、
勝手に議論を開始するインコ2羽。
その様子を、さと見は下らなさそうな顔で見る。


「いきなり門番気取って出て来た次に、
何の話ししてんのコイツら?
…これ以上、関わらない方が良さそうね」


そう判断したさと見は、
第三の目を閉じて無意識を操る程度の能力を発動。
2羽の無意識を操って姿を隠しながら地霊殿に入って行く。
そんな事など知らないインコ2羽は、議論を続けるだけ続けた。


「…テエ、怪シイ奴ガイルノニ、言イ争ッテル場合ジャネエゾ!!」

「ハッ!ソウダッタ!
オイ、オ前、地霊殿ニ入リタケレバ、俺達ヲ倒s…ッテ」


「「イナイー!?」」


そして、議論が終わった所で、もう後の祭りなのであった。




一方、地霊殿エントランスでは、
蛇丸がさとりが浴場から出て来るのを待っていた。
しかも、待っていたのはどう言う訳か彼だけでなく、
猫妖怪火車のお燐と地獄鴉のお空も一緒だ。

そして、彼女らがここでしばらく待っていると、
浴場から出て来ていつも通りの服を着たさとりがやって来る。


「あ、来た!」


さとりの姿を見て、空が声を上げる。
そんな彼女らの前までさとりは歩み寄る。


「お待たせ…
あら?貴女達も待っていたの?
…なるほど、私とこいし以外の覚り妖怪が現れたと蛇丸から聞いて、
気になったのね?」


お得意の読心で空と燐が考えている事を言い当てるさとり。
彼女の言葉に、
お燐とお空は「はい!」と元気に返事をする。


「なら構わないけど、粗相の無いように…」


お姉ちゃ――――ん!!


「粗相の無いようにしなさい」とさとりが言おうとした瞬間、
いきなり誰かが大声で叫びながら、
背後からさとりに抱き付いた。


「きゃっ!…こ、こいし!」


いきなりの事に驚きながらも、
さとりは誰かの正体がすぐに分かり、顔を後ろに向ける。
するとそこには、彼女の妹こいしが、
可愛らしい顔をしながらさとりに抱き付いていた。


「あはは!お姉ちゃん、私の心が見えないのに良く私だって分かったね!」


明るく元気な声で喋りながら、こいしはさとりから離れる。
これにさとりはやれやれと溜め息を吐きながらこう返す。


「はあ…心が読めなくても分かるわよ。
私に気付かれないように後ろから、
しかもお姉ちゃんって叫んで抱き付いて来るのは、貴女くらいしかいないでしょう?」

「アハハ☆さーすがお姉ちゃん、分かってるー!」

「…こいし、お姉ちゃん貴女が何を思ってこんな事するのか、ホント良く分からないわ…」

「そう。それなら良いよ」

「…………」


半ば呆れる様な言葉を掛けてもケロッと答えるこいしに、
さとりは黙りこんでしまう。
そんな中、お燐と蛇丸がこいしに声を掛ける。


「それにしてもこいし様、今日は帰って来るの早いですね」

「そうだな。もう外をフラフラするのに飽きたのか?」

「え?違う違う。
実はね私、人里を散歩してたら、覚り妖怪見付けたの!」

「覚り妖怪?お前も見たのか?」

「私も?ひょっとして、呪之助も見たの?」

「ああ。と言っても、俺は旧都で見たんだが…」

「じゃあ、私が見たのと同じだね。
その覚り妖怪、人里から旧都まで入って来たもん。
しかも凄いんだよ、その覚り妖怪。
お姉ちゃんやみんなと違って、私の姿が見えるんだよ!」

『はあ?』


自分の姿が見えると言う言葉に、
その場にいた全員が疑いの表情を浮かべる。


「…あれ?どうしたの?」

「こいし様の姿が見えるって…」

「こいし、そんな訳無いでしょう?気のせいじゃないの?」

「気のせいじゃないよ。だってその覚り妖怪、
人里とかで私の視線に気付いてたし、
旧都ではこっち見たのよ。あれはどう見ても私の事見えてるよ!!」

「…本当なのかしら?」


珍しく妹の言葉が信じられないさとり。
それもそのはず、こいしの無意識を操る程度の能力は、
能力を使っている本人が誰かと干渉したいと思わない限り、
絶対に誰にも存在を認識できなくなる能力だ。

事実、先程もさとりはこいしが抱き付いて来るまで彼女が帰ってきている事に気が付かなかった。
更に、とある世界の歴戦の戦士の霊も、
こいしの動きを読んでいたが、あくまで無意識を操っている時の動きを先読みしただけで、
彼女を完全に認識は出来ていたとは言い難い。

そして何よりも、
普段から小石同然の存在である彼女に踊らされているさとりは、
こいし本人の干渉も無しに、
相手がこいしの存在を認識出来るとは考え辛かったのだ。


「もう!お姉ちゃん本当だって、信じ…あっ!」

「どうしたの?…!?」


と、急にこいしが大きな声を出してさとりの背後を指差すもので、
さとりは後ろを振り返ると、
そこには、左目に傷が付いた目玉柄のケープのようなものを身に纏った、
覚り妖怪が立っていた。

こいしや蛇丸が話していた覚り妖怪―――
先程インコ2羽をほっといて地霊殿の中へと入ってきたさと見であった。


「うにゃにゃ!?」

「ニャー!?いつの間に!」


さと見の出現に、驚くお空とお燐。


「コイツだ、僕が見た覚り妖怪は!!」

「呪之助の言う通りだよ!お姉ちゃん、私が見たのこの人だよ!」


一方、蛇丸とこいしは自分が見た覚り妖怪は彼女だと指を差して言う。
しかし彼女らが騒ぐ中、
さとりだけは信じられない様な表情を浮かべ、
さと見の姿を見つめ、ゆっくりと歩み寄る。


「あ、あれ?」


さとりの反応に、こいしは若干驚きつつさとりに目を向ける。
当の彼女はと言うと、
確かめるかのようにしてさと見をまじまじと見た後、口を開いた。


「貴女…なの?」

「ええ、私よ。覚えててくれた?」

「ええ!いったい今まで何処にいたのですか?
急に連絡も無しに消えちゃって…
誰かに退治されて死んじゃったのかと思いましたよ」

「その言葉、そのまま返しても良いかしら?」


仲良さ気に会話を始めるさとりとさと見。
微妙に状況が飲み込めず、お燐とお空は口を挟む。


「ちょっとさとり様?」

「そ、その覚り妖怪…お知り合い?」

「ええ、そうよ。古石さと見…
私とこいしの昔の友達よ」

「ついでに言うと、この子らに戦い方とかも教えてやったりしたのよ。
あ、申し遅れたけど、
私ピッチピチの二十歳はたちの覚り妖怪で〜す♪」


と、明るく振る舞って見せるさと見。
だが、2人は反応に困り、蛇丸に至っては「なんだそりゃ…」な感じである。


「ちょ、ちょっと…」

「3人共、余り気にしないで…彼女、いつもこうだから…」

「ああ、知ってる…」


また反応に困った事を抗議しようとするさと見だったが、
さとりに遮られたばかりか、蛇丸に納得されてしまう。


「ちょ…おま!いつものこうだからって…ん?」


さとりに反論しようとするさと見だったが、
急に蛇丸の方に目を向ける。

一方、蛇丸は腰に手を当て、余裕の顔でさと見を見る。


「なんだ?」

「アンタ、何で私の事知ってるの?
…え?今、私の事を色々思い出した?」

「その通り…昔見た顔だと思っていたが、やっぱりお前だったのか」

「はあ?」

「…なんだ、覚えていないのか?
だったら、俺の心をよく読む事だ…」

「ん、ん〜…」


自分を知っている蛇丸に、妙な感覚を覚えるさと見だったが、
言われるがままに彼の心を読んでみる。
そして、しばし読んでみるた所、
さと見は「あっ!」と思い出したかのような声を上げる。


「思い出した!アンタ、さとりの家の側でウロ付いてた…!」

「そうだ…あの時の小さいニシキヘビだ」


さと見が自分の事を思い出したと分かった蛇丸は、
ドロンとニシキヘビの姿になる。


「ああ!さっき旧都で見た…
なるほど、道理でどっかで見た事のあるニシキヘビだと思ったら…
ずいぶん大きくなったわねえ」


やっと納得するさと見。一方、蛇丸はそのままの姿で心の声を放つ。


「(それはどうも…
じゃあ、思い出してくれた所で、あの時の事を謝ってもらおうか?)」

「へ?何の事?」

「(忘れたとは言わせないぞ…
あの時小さかった僕の口に、
石や木の枝とか無理矢理押しこんでイジメて来た事を…!)」

「へ?イジメ…
ああ、あの事?別に良いじゃん、そんな事。
ちゃんとそっちにゴメンって言ったじゃないの。父さんからもキツーく言われたし…」

「(嘘言え…
その後はミミズとかゴキブリを無理矢理食べさせようとしたじゃないか。
あの時は余りの気持ち悪い味に、吐くかと思ったんだぞ?)」

「あ、あれれぇ?そんな事したっけぇ…?;」


と、言って見せるさと見だが、その顔は明らかに図星だった。


「…さと見、嘘はいけませんよ」


無論、さとりも心を読んで嘘だと見破る。


「…もう、悪かったわね!ホント…」

「(たくっ…あれ?)」

「…どうしたの?」

「(こいしの奴、何処行った?)」

「へ?」

「こいし?」


蛇丸の言葉にさと見以外の全員が辺りを見回すと、
いつの間にやらこいしの姿が消えていた。


「はあ…あの子ったら、また消えたわね…」

「ホント、気まぐれですねえ…」


またも無意識を操って姿を隠したかと、
溜め息吐くさとりにお燐も一言。
お空も蛇丸もいつもの事でやれやれと言いたげな様子だ。


「消えた?嘘ぉ!」


しかし、さと見だけは違った。
彼女は、こいしが消えた事が信じられない様子であった。


「さと見?」

「どうしたの?」

「どうしたもこうしたも…
こいしが消えたって…何処に?」

「何処って…アタイらにも分かんないよ」

「い、いやいやいや!そこにいるじゃない!」


そう言ってエントランスの向こうを指差すさと見。
しかし、そこには誰もいない―――


「え?」

「誰もいないじゃない…さとり様」

「お空…聞くまでも無いでしょう?誰もいないわよ」

「(俺にも見えん)」


口々に誰もいないと答える一同。
しかし、さと見は一歩も引かない。


「いやいるって!そこで立ってこっち見てるって!
ホントに…」

「"見えないの?"。見えませんね」

「…へえ、そう。じゃあ…」


さとりが見えないと答えると、
さと見は急に両目も閉じ、スウッと一呼吸入れる。

そして―――




「―――!」


さと見は、第三の目を片手人差し指で一瞬なぞった後、
片目を開けてビシッと先程指差した方向を指差す。

すると、不思議な事にそこにはいなかったはずのこいしが、
パっと姿を現した。


「(!?)」

「こ、こいし様!?」

「あ、あれれ?さっきまでそこに誰もいなかったよね?」

「う、嘘…」


こいしの出現に驚く4人。
だが、一番驚いているのは、こいしの方だ。


「あ、あれ?何で?!私まだ…」

「そう、貴女は無意識を操っていた…
その力を同じ力で相殺したのよ」

「同じ力で相殺した?」

「同じ力…はっ!まさか!」


さと見の言葉に、さとりは何かに気が付く。


「やっと気付いたの?遅い遅い…」


そんな彼女を見て、さと見は顔だけ振り返り、
左手の上に第三の目を浮かばせ、それをさとり達に見せる。
今の彼女の第三の目は、閉じていた。


「あ…!」

「こいし様と同じだ…」

「やっぱり…さと見…貴女も…!」

「そう…私も無意識を操れる…
でも、心も読める…
だって私、第三の目、自由に開け閉めできるもん」


そう言ってさと見は、
左手を第三の目のまぶたの前を下から上へと横切らせる。
すると、彼女の第三の目がパッと開いた。


「す、凄い…」

「貴女…いつの間にそんな力を!?」

「え?外の世界にいる間よ。
そんな事より、こいし。
アンタだったのね、地上から私の事ずっと見てたのは?」

「そうだよ。やっぱり貴女、私の事見えてたんだ」

「まあね。しっかし驚いたわ。
旧都では何で私の事に気付いたんだろって思ったけど、
私と同質の力を持ってたからだったのね。
これで謎が解けたわ」

「それはこっちの台詞だよ」

「俺も同様だ。
何でこいしのように忽然と消えたのか、やっと合点が行った」


そう返すこいし。
いつの間にかその側で少年の姿になっている蛇丸も納得している。


「ふむふむ、お互いの謎が解けてスッキリって感じ。
にしても…」


と、さと見は急に真剣な表情になると、こいしと顔を合わせる。


「?」


一方で顔を合わせられた本人は、表情1つ変えないで首を傾げる。


「…レミリアの言う通りね。
アンタ、本当に心を閉じちゃったのね…
いや、閉じたというより空っぽになってると言うか…」

「レミリア…貴女も彼女に会ったの?」

「え?まあ、アンタらの知り合いだって聞いたからね。
しっかし、見ない内にホント随分代わっちゃったわね、アンタら。
被り物入れ替わってるし、こいしなんてこんなんだし…
と言うか、この子の第三の目、色とかコードとか変わり過ぎなんだけど…」

「かく言う貴女こそ、随分見た目が変わったと思いますよ。
私達より頭一つ大きくなってるし、
服が違うし、何より気になるのがそのコードと左目に、スカートの切れ込み…
いったいどうしたのでしょうか?」

「そうそう!どうしたのそれ?私、そのせいで誰なのか分かんなかったんだけど…」

「それに気になるのはそれだけじゃありません。
その目玉のケープ、何故貴女が着けているのですか?…
それは確か…」

「…………」


古明地姉妹の問い掛けに、さと見は急に黙り込んでしまう。
それを見たさとりは、彼女の心を読むと、
深い悲しみや怒りなどを感じる。


「…私達が見てない所で、辛い目に遭ったようですね…」

「そう言うアンタ達も、そうなんじゃないの…?」

「…もちろんです。今のこいしがその証…
そうですね、ここでずっと立ち話するのもなんですし、
客間に移動しましょう。お互い何があったのかはそこで…」

「OK」

「あ、あの…さとり様!」

「アタイらもご一緒して良いでしょうか?」

「…貴女達も、さと見の事が気になるのね?
さと見、良いでしょうか?」

「アンタが良いなら…」

「そう。じゃあ、貴女達も着いてきなさい」

「あ…ありがとうございます!」

「じゃ、俺もついでに行くとするか…」

「もちろん、私も気になるから行くよ」


こうして、地霊殿の一家とさと見は、
お互いの情報を交換し合うべく、地霊殿の客間へと移動するのであった―――



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